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リウマチ治療と寿命の関係

 革命的な進化を遂げたリウマチ治療の中心は、免疫抑制剤と生物製剤の投与です。
 中でも鍵となる薬剤が免疫抑制剤メトトレキセートです。この薬剤で治療を受けた患者さんが10年長生きできる確率は、ほかのリウマチ治療薬のみを投与されてきた場合の薬5倍というデータがあります。この薬剤と新しい生物製剤の併用療法を受けた患者さんでは、更に3割生存確率がアップします。
 リウマチの炎症を早期からしっかり抑えないと、心筋梗塞や腎不全、肺障害などに罹患する危険性が高まります。痛みだけをステロイドホルモン剤で抑えている場合は、生存率が半分になってしまいます。薬の副作用を心配される方も多いのですが、心配しすぎて有効な治療を試みるチャンスを逃すのも問題ではないでしょうか。これがリウマチ患者さんの寿命が短いと言われる要因の一つと言えます。

関節の腫れを見逃さないで

 日本リウマチ学会2007で、関節炎症状出現早期で診断未確定の段階の患者さんを登録し、定期的に経過観察する部門を開設したという長崎大学の報告がありました。
 関節リウマチは、早期発見治療で約40%の患者さんが寛解(治癒に限りなく近い状態)するようになり、早期発見の重要性が高まっています。強力な免疫抑制剤と生物製剤の登場によって治療法に革命的な進歩があったからです。早期に発見された場合に限られると言う条件付きですが、不治の病というイメージは昔の話です。寛解する機会を逃さないためには、リウマチの疑いの段階から炎症活動性を定期的にチエックする必要があります。
 健康保険制度の変化で治療費が非常に高額になったことは大問題ですが、癌医療と同様に早期発見治療でその後の医療費なしの時代が来ると考えればどうでしょうか。2007.6

関節リウマチ、変形性関節症、痛風の見分け方

 今回は、関節の痛みを訴える、よく似た病気の見分け方のお話です。
 痛風は鋭く尖った尿酸の結晶が関節にたまって炎症を起こす病気です。高尿酸血症が持続している場合にみられます。ただし、発作中の尿酸値は必ずしも高くない点に注意が必要です。関節リウマチの関節痛は一般に強くなったり弱くなったりしながら持続性します。痛風は発作性で男性が95%位を占める点も大きな特徴です。リウマチのように多関節に痛みが起こることもありません。  
 変形性関節症は、加齢に伴う軟骨の破壊です。指先の関節の変形が特徴的ですが、リウマチと同様、指の中央の関節の変形もよくみられるので注意です。膝の腫れの訴えもよくありますが、強い炎症反応がないのが特徴です。X線検査でも特徴的な変化を認めますが、リウマチでも老化による変化は同様です。

リウマチ治療の現状

 関節リウマチの医療は、飛躍的に進歩しています。病態解明が進んだ結果ですが、すべての患者さんに恩恵を与えられるところまでは至っていません。
 現在のリウマチ治療において、患者さんの将来は「(発症初期を除けば)メトトレキセートという薬剤に副作用なく反応するかどうか」にかかっていると言っても過言ではありません。
 この薬剤を十分量使用したにもかかわらず無効だった場合、最新の生物製剤の使用を検討することになります。しかし、肺、肝臓、腎臓に異常がある方、糖尿病などの合併症のある方、結核の既往のある方、癌などの悪性腫瘍の治療後間もない方など、通常の治療ルートに乗せられない患者さんの場合には、治療法も千差万別です。
 高額な薬剤が多いのも治療の選択肢を狭める大きな問題です。

リウマチ治療のアンカードラッグ

 先日、長崎で開催されたリウマチ学会で熱い論議が交された注目の治療法は、やはり『生物製剤』でした。従来の治療法がかすんで見える程効果がある薬剤です。
  リウマチ治療が転換期にあることは確かです。私の経験でも、生物製剤を開始した患者さんの7割以上は、治療直後から関節痛が改善し、「気分がとても良くなった」と話されます。
 ただし、リウマチ治療で最も頼りになる薬剤(リレー競技で言えば最終走者であるアンカー)はメトトレキセート(商品名:リウマトレックス、メトレート) です。
 現在、最も強力な治療薬と言われる生物製剤の効果を最大限に引き出すためにも、基本的にこの薬剤の併用が必要となります。副作用に注意は必要ですが、患者さんの将来を左右する最も重要な薬剤であることは間違いありません。

リウマチ外来のレーザー治療

 リウマチのレーザー治療に期待される効果は大きく2点あります。鎮痛作用はよく知られている効果で、レーザー治療直後に関節痛を軽減する有効率は多施設で70〜80%と報告されています。しかし、現在最も強力なリウマチ治療薬である生物製剤でも軽減できかった関節痛に対する当院の研究では25%の有効率に止まっており、すべてのリウマチ患者さんをこの治療法の対象にはできません。
 次に期待される効果は、既に破壊されてしまった関節に対する関節機能の改善、機能維持効果 です。これは薬物療法に期待しにくい効果で、リハビリテーション医療に組み込まれる領域のレーザー治療です。1〜2週に1回、継続して行ないます。疲労感の改善や元気になった実感が得られることもこの治療の特徴です。ただし、リウマチ専門外来に組み込まれてこそ本領が発揮される治療法なのです。

リウマチ治療と寿命の関係

 革命的な進化を遂げたリウマチ治療の中心は、免疫抑制剤と生物製剤の投与です。
 中でも鍵となる薬剤が免疫抑制剤メトトレキセートです。この薬剤で治療を受けた患者さんが10年長生きできる確率は、ほかのリウマチ治療薬のみを投与されてきた場合の薬5倍というデータがあります。この薬剤と新しい生物製剤の併用療法を受けた患者さんでは、更に3割生存確率がアップします。
 リウマチの炎症を早期からしっかり抑えないと、心筋梗塞や腎不全、肺障害などに罹患する危険性が高まります。痛みだけをステロイドホルモン剤で抑えている場合は、生存率が半分になってしまいます。薬の副作用を心配される方も多いのですが、心配しすぎて有効な治療を試みるチャンスを逃すのも問題ではないでしょうか。これがリウマチ患者さんの寿命が短いと言われる要因の一つと言えます。

リウマチのステロイド療法について

 副腎皮質ステロイド剤は関節リウマチの治療法として有用なのか、有害なのか。結論はともかく多くの患者さんが使用しているのが現状。それは骨粗鬆症を起こして骨折しやすくしたり、胃潰瘍や糖尿病、重症の感染症を起こす等の副作用があるにも関わらず、その鎮痛炎症作用も強大であるからです。理想は使用しないこと。でもそれでは社会生活を失う人が沢山出るでしょう。問題はこの厄介で魅力的な薬剤をいかに上手に使うかです。関節痛のみならず、骨関節破壊の抑制も期待される免疫療法の開発が続いています。免疫療法が主で、ステロイド剤は補助であることを医師も患者さんも認識することです。一般 に使用されるプレドニゾロンで1日5mg以下の例では副作用の発現も軽微で、現状の免疫療法などを駆使すれば、ステロイドの減量中止は容易です。これ以上の使用はできれば避けて。

関節リウマチのステロイド治療

 今回は、リウマチに対してステロイド剤を使用する場合の基準についてお話します。現在使用中の方も、使用を拒否されている方も参考にして下さい。現状のリウマチ治療の主体は、抗リウマチ薬と呼ばれる免疫療法です。この薬剤はリウマチ特有の関節破壊を阻止する可能性をもっていますが、鎮痛効果が現れるまで通常2ヵ月以上かかるという欠点があります。それに対しステロイド剤の効果 、発現は数時間程度と、早くかつ強力です。発熱や全身衰弱のため日常生活が営めない、抗リウマチ剤が効きにくい。関節液を頻繁に抜かなければいけない、関節破壊が急速に進行している、肝臓や腎臓の機能が低下して抗リウマチ剤が使えない、等の条件に当てはまる患者さんにとっては、ステロイドの効用が大。但し副作用対策も同時に行う必要があります。先の条件に合わない方は使用しないことです。

不眠症と疲労に伴う全身の痛み

 首、肩、肘、腰、股関節、腰などに圧痛などを伴い、しばしばリウマチに似た朝のこわばり感を訴える患者さんが来院します。下痢や便秘をくり返す過敏性腸症候群、頭痛、手指のしびれ感を伴うことも多いのですが、不眠症とその為の疲労感も特徴的な症状です。20〜60才位 の女性に多く見られます。検査所見では特別な異常を認めないため心因性リウマチとか慢性疲労症候群あるいは、うつ病などと診断されている場合が多いと思いますが、アメリカリウマチ学会の診断では線維筋痛症候群(FMS)と呼んでいます。まれな病気ではないし、精神障害でもないのです。ましてや、これが原因で死亡することもないし、関節が変形してしまうこともありません。この病気の治療は睡眠障害を改善することが第一で、鎮痛剤や副腎皮質ステロイド剤も単独では無効です。レーザー治療が有効なこともあります。

周期性疼痛症候群

 リウマチには多くのタイプがあります。上記に紹介した線維筋痛症候群(FMS)では痛みは睡眠と関係が深いということでしたが、周期的にくる関節痛や関節の腫れ(水腫)がくるタイプのリウマチ性疾患もあるという話です。一つは回帰性リウマチと呼ばれるタイプで、比較的よくみられます。いわゆる関節リウマチの10人に1人はいるのではないかと思われますが、数時間から数日間、関節痛が発作的にきますが長く続かず、通常は完全に痛みは消えています。発作時に検査すれば血沈値が上昇していることもありますが、何もない方が多いのです。しかし、1/3はいずれ慢性関節リウマチに移行しますのでご注意を。一方、突然膝の腫脹(関節水腫)が起こったかと思えば数日で完全に消えてしまうタイプもあります。この間歇性関節水腫は関節破壊はきませんが、リウマチとの鑑別は重要。