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新型コロナウイルス感染症対策

【新型コロナウイルス感染症対策一覧】

COVID-19が指定伝染病から外されるのはいつ?

 流行中の新型コロナウイルス感染症は、基礎疾患を持たない若者達にとっての重篤化リスクは季節性インフルエンザ程度、あるいはそれ以下と考えられます。一方では、長期喫煙者などの慢性呼吸器疾患や血栓塞栓症を起こしやすい脳梗塞、心筋梗塞、深部静脈血栓症などの基礎疾患を持っている多くの高齢者にとっては、重篤化リスクの高い感染症です。青春を謳歌し、経済活動の活発な若者達に感染がどんどん広がっていきますが、そのの行動を制限することは、無理だと思われます。高齢者の多くは自粛を続けていますが、若い世代と同居する高齢者にとって、家庭内感染をどう防ぐかは困難な課題です。基礎疾患を持つ人達の感染防御はとても大事ですが、基礎疾患をしっかり治療して、リスクを軽減することが、偶発的な感染に対する最大の防御だと思います。インフルエンザと同程度のリスクなので、治療薬や、ワクチン接種が普及するまでの我慢です。その段階で、インフルエンザと同じ5類伝染病に指定変更されます。そうなれば、本日の感染者数という報道もなくなり、PCR陽性、すぐ隔離という流れはなくなり、話題から消えていくことになりますが、1〜2年先でしょうか。。2020/8/10 

人類発展の歴史とその盲点を突くコロナウイルス

 生物は、生きるために食べる。現代社会に生きるヒトは生きるために食事を摂っているのだろうか。他の生物とは異なる進化をし続ける人類は他人と交わる手段として食事を摂るのではないか。
 レストラン、居酒屋で食事をするのは生きるために食事をする場所ではなくなったのではないか。食べることを狙ったロタウイルス、大腸菌O 157などの食中毒病原体と違って、新型コロナウイルスは食事と会話の隙間を狙った新たな攻撃パターンであろう。熱処理、冷凍処理などで人類は、病原体の侵入を阻止してきたわけですが、一方では会話の機会だけを狙っても、マスクを着用されれば、侵入できない訳で、多くのウイルスは、この人類の壁を破れず消え去ったと考えられます。
 しかし、食べるためにマスクを外すというヒトの行動、社会との繋がりが必要な人類の発展の歴史に挑戦してきたコロナウイルス。生物の生き残りをかけた戦いという壮大なドラマですね。賢いウイルスですよ。敵の狙いをよく知って、油断せず、よく考えて行動してくださいね。2020/8/8 

ご家族あるいはごく親しい知人以外と最近マスクを外して会話、会食しましたか。

「はい」と答えた方、コロナウイルス感染対策を見直してください。
明日にも発症するリスクが高いです。貴方が罹患すれば、通常マスクを外して接触するご家族、友人にも間違いなく感染が広がります。つぎの質問です。 手洗い、アルコール清拭していれば、マスクをしていなくても、コロナウイルスに感染しないと思いますか。 「はい」と答えた方、危険がいっぱいです。幸運はいつまで続くやら。マスクをしなければ、手洗いなどまったくといっていいほど効果がありません。欧米で流行を止められなかったのは、アルコール消毒を過信したからです。

次の質問です。コロナウイルスが遠方から飛んできて感染すると思っていますか。怖くてどこにも外出できないですか。
「はい」と答えた方、認識を変えましょう。例えウイルスが空中を飛んできても、そんな程度では私たちの免疫力を突破することはできません。私たち人類の長い長い歴史は、自然界に住む無数の微生物との戦いの歴史でもあります。その中をくぐり抜けてきたことで、鍛え上げられた自然免疫機構が備わっています。今回のコロナウイルス程度の微生物による空気感染など全く怖くありません。大空の下では、マスクを外そう。熱中症だけでなく、マスク皮膚炎、咽頭炎、副鼻腔炎、中耳炎など弊害が大きいのです。認知症も悪化しますよ。

ここまで話してくると見えるでしょう。お互いにマスクさえしていれば、コロナウイルスに感染しないということの確認です。例え、満員電車の中だろうと、マスクを着用し、会話をしなければいいのです。スーパーの中だろうとマスクさえしていれば感染しません。買い物カゴ、電車の吊り輪など、手に触れ、鼻に触れてコロナに感染したという話はありません。病院内の重症患者さんに濃厚接触した看護師の着衣やトイレ使用を通じて接触感染があったのではないかと疑われた事例のみです。日常生活レベルでは、手を通じてコロナウイルス感染したという証拠がありません。あるとしたら、ノロウイルス感染などの食中毒ウイルス感染です。帰宅後、水でよく手を洗ってください。それで十分です。2020/8/2 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が重症化する病態

コロナウイルス感染で肺炎を発症する人が約20%、肺炎罹患率は、喫煙者が非喫煙者の14倍という中国上海市の病院から報告があったという話はすでにしましたが、中国上海市当局からの武漢におけるCOVID-19の実態報告では、感染者の中で、重篤化し、人工呼吸器装着や死亡に至った数は、喫煙者が非喫煙者の2.99倍と報告されています。喫煙者対策は重要なのですが、更に話を進めます。亡くなった人達は、肺炎で亡くなったわけではないという話をします。肺炎の重症化がきっかけでサイトカインストームが起こり、血管内凝固が亢進したという証拠が出てきました。

 ドイツHamburg-Eppendorf大学医療センターより、COVID-19により死亡した患者12人のうち7人(58%)の患者に深部静脈血栓塞栓症(DVT)を認めたという報告がありました。COVID-19による凝固異常が死亡に影響している可能性を示したものです。

 実際、関節リウマチでは、急性炎症タンパク質であるTNFα、IL6を代表とするサイトカインが大量に産生され関節炎が惹起されますが、特にIL6はフィブリノゲン(線維)や多くの凝固因子産生を高め、血管内凝固しやすい環境を生み出します。炎症が起こると血液凝固が促進するのは、生体の防御反応です。血管が破れると、止血しようとして凝固が起こるわけで、炎症で組織液が漏れるのを防ぐために血管を修復する現象でもあります。コロナウイルスによる急激な激しい炎症に対する生体の防御反応が過剰になれば、血管内凝固が起こるというということで、いつもお話している免疫応答の過剰反応が重症化する機序だという話と一緒です。COVID-19で突然死された方々の直接的死因は心筋の血流が絶たれたための心筋梗塞と考えます。

 関節リウマチの治療薬として、免疫抑制剤、生物学的製剤が使われます。これらはサイトカインの産生や作用を抑制し、関節炎の改善にとどまらず、血小板を減少させたり、凝固因子を低下させ、血管内凝固を抑制します。勝手に治療を中断して、炎症が再燃すれば、血液凝固しやすくなるということです。

 リウマチ治療を中断すると、コロナウイルスによる炎症で血液凝固しやすくなっている状況にも関わらず、加えて、凝固を抑制する抗サイトカイン治療や免疫抑制剤をやめてしまうことが、いかに危険なことか理解していただけるのではないですか。コロナウイルス流行期におけるリウマチ患者さんのリスク管理は、リウマチの炎症を鎮静化する治療を継続することです。不幸にも、コロナウイルスに感染してしまったら、一時的に免疫抑制剤を中断することはありますが、直接的な抗サイトカイン療法である生物学的製剤は継続が原則です。血液凝固しやすい状態にあるかを事前に検査で確認し、治療方針を確認しておくこと、あるいは予防薬投与を考慮することも大切ですよ。 2020/6/4

新型コロナウイルス感染症と免疫抑制剤・ステロイド治療

 心臓移植を成功させるためには、他人の臓器に対する拒絶反応を抑制する免疫抑制剤を使用しなければなりません。免疫抑制剤を使用中の患者さんが新型コロナウイルス感染症に罹患しても重篤化しないという論文が発表されました。初期症状は健常人が感染した場合と変わらなかった上、次の段階の肺炎に進んだとしても、その後の経過は穏やかだったとのことです。少なくとも適度に免疫抑制することは、重篤化を予防するという免疫学的理論を裏付けるデータの一つと考えます。
関節リウマチ、膠原病ではどうかという報告もようやく出てきました。今回の爆発的なコロナ流行地、米国/欧州リウマチ学会からの提言です。免疫抑制剤については、感染してもいないのに、流行しているからと言って中止してしまうのは絶対に危険で、中止によって病気の活動性が高まってしまうと、逆にコロナウイルス感染を受けやすくなります。通常の風邪やインフルエンザについても同様で、免疫抑制剤を中止すれば、必ずリウマチ、膠原病は悪化するので、それに加えて病原体への抵抗力が落ちるのです。免疫抑制剤という言葉の響きにごまかされないように。
ただし、全身性エリテマトーデスという膠原病治療は免疫抑制剤に加えて、未だステロイド治療に頼っている患者さんが多く、コロナウイルスに対する感染の受け易さが問題になります。しかし、全ての患者さんに当てはまるわけではありません。ステロイド剤の投与量によっては、むしろ抵抗力が増す病態もあります。プレドニゾロン(プレドニン)換算で1日10mgを超えて服用されている患者さんは、コロナウイルスに抵抗力が弱いです。マスクと三密を避けることが重要です。ただし、1日投与量5mg以下の患者さんは、むしろ抵抗力が強い状態かもしれません。専門医の中にも反対意見はあるでしょうが。かつて、全身性エリテマトーデスの免疫機能を研究していた時に発見したデータですが、ウイルス感染に対する抵抗力はステロイド投与量の影響が大きく、低用量と高用量で抵抗力が逆転することを見つけました。5mg以下の少量投与では、感染初期の自然免疫力の指標の一つであるインターフエロンαの産生が高く、ウイルス感染を受けにくく、十分な抵抗力を持っていると考えられました。実はこれが、全身性エリテマトーデスという難病の発症と関連したということが後にわかってくるのですが。それはさておき、関節リウマチの場合は、ステロイド剤を投与されていたとしても、通常1日5mg以下なので、現在服用中の患者さんは、コロナウイルス流行期だからと言って、感染してもいないのに、勝手に免疫抑制剤や、ステロイド剤をやめてはいけません。抵抗力が落ちますよ。実際に感染してしまった場合は、リンパ球が低下し過ぎる場合があり、一時的に免疫抑制剤を休薬することを検討します。いずれにしても勝手に自分で判断しないことです。感染しても、8割は軽症なのです。例え肺炎を起こしてしまったとしても、重症化する次のステージに入らないようにするには、免疫療法が必要なのですから。国のこれまでの政策は、国民に感染したら死ぬなどというイメージを植え付けてしまったので、意識改革しないといけないですね。本来は、ほんの一部の基礎疾患を持った人達だけをリスク管理すれば良かったのですが。これからでも政策転換したほうがいいですね。
三密対策は感染症公衆衛生学の先生方にお任せして、私たちのような免疫学の専門家のやるべきことは、致死率の高い基礎疾患の病態改善に勤め、重篤化リスクを下げてることで、今秋の来たるべき第2波に備えることだと考えています。医療崩壊を防ぐには重症化する患者さんがいなくなればいいのですから。当院では新型コロナウイルス感染重篤化リスクを診断し、対策を指導しています。つぎはその話。 2020/5/22

免疫学から見る新型コロナウイルス感染症の特徴1

 感染症学は、病原体を敵視し、排除することを目指して資本主義社会の発展とともに、衛生状態を改善しながら成果を挙げた領域だと思います。 抗生物質や抗ウイルス薬、ワクチンなどをどんどん開発し、少なくとも先進国の国民には感染症など怖くないと錯覚させた歴史でもあります。
 しかし、ヒトと同じように、ウイルスも生き物なので、子孫を残すため生き残りをかけて優秀な子孫を作り出そうとします。それを人間社会ではウイルス変異と呼んでいますが、今回の新型コロナウイルスの優秀さは群を抜いています。ヒトの免疫機構を強く刺激しないで、気づかれないようにゆっくり時間をかけて拡大していきます。その中で、最も増殖しやすい敵に狙いを定めて一気に倒すスタイルが新型コロナウイルスです。
 中国感染症制御予防センターから、新型コロナウイルス感染者数72314例の段階で81%が感冒症状があっても軽症、5%が呼吸不全、敗血症性ショック、多臓器不全に至り、そのうち約50%が死亡、致死率2.3%だったと報告されました。中国からの他の報告では、肺炎を併発した患者さんの93%が喫煙者で、非喫煙者の14倍というデータが提出されています。つまり、今回の新型コロナウイルス感染症の肺炎罹患率は約20%ということですから、肺炎になってしまったヒトの殆どが喫煙者だったということです。非喫煙者は感染しても軽症という事でもあります。確かに、放射線肺障害を持った方が亡くなってしまったという残念な報道もあったのですが、肺障害を持っておられる患者さんは感染しないように細心の注意が必要ですね。その他、路上で倒れていた人達にコロナのPCR検査が陽性だったという報道も驚かされました。その原因の多くは心筋梗塞と推測されます。
 これから、免疫学から見た新型コロナウイルス感染症のお話をしますが、喫煙者であれ、突然亡くなった人達であれ、直接肺炎で亡くなっているわけではなく、肺でのウイルスの増殖がきっかけで起こった、過剰免疫応答が原因なのです。 2020/5/18

免疫学から見る新型コロナウイルス感染症の特徴2-1

 我々が学んできた免疫学は、病原体と戦ってきた歴史の中から生まれたものです。外から攻めて来た敵に対してだけでなく、自分自身の細胞が変質したものに対しても異物として認識し、防御しようとする機構が免疫の基本的意義です。
 しかし、免疫学の発展により、免疫機構そのものが病気を生み、重症化させるということに気付きました。その結果、「過ぎたるはおやばざるが如し」です。強い相手とまともに戦えば自滅するリスクもあり、逆に攻撃を緩め過ぎるとそれまで以上に敵が勢いを増すということを見出しました。免疫再構築症候群と呼んでいますが、相討ちになる前に戦いを収束させるには、共存する道を選ぶ事も生き残る知恵です。  実は、人間が頭で考える事は、細胞あるいはウイルスが考えることでもあり、それが生命を維持するミクロの世界が生み出す知恵、生命力そのものと言えます。新型コロナウイルス感染症で重篤化する病態は、まさに生体とウイルスの相討ちそのものです。戦いが始まる時、即ち感染初期ということですが、生体の自然免疫機構によりウイルスの増殖を強力に阻止するインターフェロンαが産生されます。そこで阻止できないと獲得免疫機構に受け継がれ、かつて勝負したことがある相手には、その経験が生かされてウイルスの進撃を止めることができます。経験値の方が勝つわけです。
 しかし、戦ったことのない敵に無謀な戦いを挑めば相討ちの可能性が高いのですが、生物は生き残るために戦ってしまいます。これがサイトカインストームと言われる状況で、敵と見方の区別がつかない戦場を想像してみてください。焼け野原です。免疫学は、生体の免疫機構と関連病原体との共存を目指そうとした結果、防御力は落とさず、戦力も適度に抑えるのが良いのではと考えるようになって、免疫調節という考え方がうまれました。
 革命的と呼ばれた関節リウマチの治療はこの免疫学の大きな結晶の一つなのです。2020/5/18


疫学から見る新型コロナウイルス感染症の特徴2-2

 免疫抑制剤とは、異常な細胞増殖を抑制できる薬剤の総称です。癌細胞の増殖抑制には最大限の作用を引き出す目的で投与されます。
 しかし、関節リウマチや膠原病に用いる時は、免疫調節を目的に投与量、投与間隔を調節して用います。免疫抑制剤を用いて、リウマチ膠原病の過剰な自己免疫反応を抑制しながら、細菌、真菌、ウイルスからの攻撃に対しても相討ちにならないように防御も堅めます。これが免疫調節で、最大限の効果を達成するために、徹底的にリスク管理しているのです。免疫調節が上手くいっている患者さんは、新型コロナウイルス感染を受けても臨床の実際においても、理論的にも重症化しないと考えられます。治療が上手くいっていない場合は、治療を見直してください。
 リウマチ、膠原病で治療中の患者さんに限らず、新型コロナウイルスに対する防御力が決定的に低い人達は、喫煙者であり、間質性肺炎などの肺障害に罹患している方々です。心筋梗塞の既往や動脈硬化が進行している方々も、重症化するリスクが高く、血管内で血液凝固しやすい人達だったという指摘があります。Dダイマーという血液検査値が一つの指標になりますので、年齢に関係なく治療の手を緩めることなくご自身の健康状態を確認し、防御を堅めて今秋に始まる次の第2波に備えてください。2020/5/18

これらのリスク因子がない人達にとっては、ただの風邪ですが、家族や知人にリスクを抱えている人達がおられますよね。その人達に、防御を堅めるようにお伝えください。


ニューモシスチス肺炎対策から学ぶ新型コロナウイルス肺炎予防

 関節リウマチ治療で最も発症予防に努めている合併症の一つにニューモシスチス肺炎があります。病原菌は真菌の一種です。この肺炎に見られる急速かつ広範な肺障害は、菌体表面の β-D-グルカンなどにより宿主の強い免疫反応が誘発されて生じるものです。すなわち、組織を破壊するのは菌ではなく生体の過剰免疫であることです。この肺炎が新型コロナウイルス肺炎とレントゲン像、CT所見、そして急速な進行病態が良く似ています。我々リウマチ内科医は、致死的なニューモシスチス肺炎を併発させないように、予防薬を投与したり、免疫抑制剤の投与量や投与方法を調節してリスク管理しています。新型コロナウイルス肺炎の予防に於いても、この経験を生かそうとしています。間違って新型コロナウイルスに感染したとしても、重篤な肺炎にならないように日頃から体調の変化、定期的な血液検査やレントゲン検査などを施行し、危険な方向に変化していないかを常に監視しています。ほとんどの患者さんにおいては、過度に心配する必要はありません。
 しかし、診察時に新型コロナウイルスに感染すると重篤になるリスクがあると言われている患者さんが一部おられます。肺障害を合併しておられる方々です。予防投与など、必ず指示を守っていただきたいのです。2020/5/6


新型コロナウイルス感染症で重篤化する本当の基礎疾患とは 1(1)

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、重篤あるいは、大変不幸な経過をとられる方が増えてくる現状にあります。不安を持ってお過ごしの患者さん、ご家族の皆様に、情報提供いたします。
このウイルスは、咽頭粘膜で増殖するタイプと肺組織で増殖するタイプの2つのパターンがあることがわかっています。咽頭粘膜(のど)で増殖するパターンは、軽症で、ご本人は元気ですが、動きまわるので感染を広める危険が大きいグループです。このグループからの感染拡大阻止は、密集、密閉、密接のいわゆる三密をみんなで守るしか方法がありません。なかなか難しいですね。
一方、基礎疾患をお持ちの皆さんにとって、一番の心配事はなんでしょうか。自分が感染したら死んでしまうのかということですね。この点について、長年、強力な免疫抑制剤や生物学的製剤を用いて、結核、肝炎、日和見感染症などのリスク管理の方法を作り上げることで、様々な感染症から皆様を守ってきたリウマチ学発展の歴史、山のような実験、臨床治験、臨床経験から得た確信について、お話したいと思います。 第一にリウマチ治療中の大多数の皆さまにとっては、コロナウイルスに感染してしまったとしても、咽頭炎で終わるだろうということです。過度に恐れることはないですが、重症化あるいは不幸にして死に至った大多数の人達に共通しているのは既存の肺障害を持っていただろうということです。詳細な発表はまだないのですが間違いないと思います。2020/4/28


新型コロナウイルスに狙われる既存の肺障害とは 1(2)

 既存の肺疾患という意味で、とても重要なことですが、長期喫煙者の方は、明らかに重篤な肺炎に発展するリスクが高く危険です。慢性閉塞性肺疾患(COPD)に罹患している可能性が高いからです。軽度の肺炎で済むか、重篤になるかの違いは、すでに起こっている肺組織の損傷の程度に左右されるだけではありません。喫煙者の肺組織では常に起こっている肺組織の炎症修復過程における過剰な免疫応答が繰り返されています。クスクスと燃えている場所に、さらにコロナウイルスの攻撃を受けた場面を想像してみてください。常に戦闘態勢にある場所にさらなる敵が攻撃してくるのです。必死に抵抗する免疫担当細胞の姿が目に浮かびませんか。この必死に戦う際の武器としてサイトカインを大量に産生し、その過剰防衛が自身の肺組織障害を一気に引き起こし重篤化させると考える免疫学の専門家が多いのです。実際、このサイトカイン(IL6)を急激に抑制するトシリズマブというリウマチ治療薬で、コロナによる重症肺炎から命拾いしたという患者さんが多くおられます。CAR-Tと呼ばれるがん細胞を猛烈に殺す最強の治療法があるのですが、細胞死直前のがん細胞はこのサイトカインを嵐のように産生するので、激しい高熱や全身組織の機能低下を起こします。治療によって患者さんが死亡する事態となり、この治療法は世の中から一時的に消えたのです。しかし、このトシリズマブを投与することによって大量のがん細胞を一気に殺しても患者の命を救えるようになったのです。再び脚光を浴びる癌治療として登場しています。
既存の肺疾患としては、その他、気管支拡張症を伴う慢性気管支炎、肺水腫を伴ううっ血性心不全、膠原病、放射線など様々な原因による間質性肺炎などが含まれると思います。まずは主治医にリスク評価していただき、その上で対策を立ててもらうことが大切です。2020/4/28


新型コロナウイルス感染症から喫煙者を守るには 1(3)

 喫煙者が危ないというお話は先にしましたが、喫煙者をコロナから守る方法はあるのかということです。いつ感染するかわからないので、まずは、この機会に禁煙です。禁煙することで、肺組織における急性炎症は徐々に鎮まっていくので、今更禁煙しても無駄というわけではなく、リスクは低下すると思います。しかし、それでは間に合わない可能性が高いです。それと同時に、過剰な免疫応答を抑制するステロイド吸入が有効と考えます。重篤にならないように予防しましょう。現在シプレソニド(商品名オルベスコ)が重症者に有効かどうかという治験中ですが、品切れ状態にあるようです。私からの提案は、喫煙による慢性閉塞性肺疾患を治療することで、過剰な免疫応答を抑制し、重篤化を予防することが目的です。気管支喘息に用いられるオルベスコは慢性閉塞性肺疾患に保険適応がなく使用できません。保険適応のある他の薬剤を使用することになります。ご家族で長期喫煙されている人がおられたら、現状のリスクを評価した方がいいと思います。まだ統計的には、喫煙が唯一の危険因子という結論は出ていませんが、一度収束した段階での喫煙率も年齢分布も異なる世界各国とのプロペンシテイスコアマッチングという手法で統計処理した結果を待ちたいと思います。おそらく喫煙者が感染すると、致死率が異常に高いという結果が出るのではないかと心配しています。日本国民の喫煙率は17%程度なのですが、不幸にも亡くなられた方々における喫煙率はどの程度だったのでしょうか。30%あるいは50%?  2020/4/28