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第20回 日本レーザー医学会より

 第20回日本レーザー医学会の低出力レーザー治療部門では、癌患者さんの痛みの治療にも用いられ成果を上げているという報告が注目されました。従来、癌性疼痛にはレーザー治療は無効なのではと思われていました。私自身も積極的に試みてこなかった分野でしたが、肝・胆・膵・胃・直腸・肺・膀胱・前立腺癌などに試みて、約70%の有効率だっと報告されたのです。一方、野球肩などのスポーツ障害への応用は定着した感があり、レーザーによく似たスポット型直線偏光近赤外線治療器も、整形外科疾患、末梢血行障害、アトピー性皮膚炎、脱毛症などの皮膚疾患に対する有効性が広く認められ、有用な治療法として定着してきたようです。低出力レーザー療法は、この20年間の壮絶な議論を経て、痛みの治療法としての確固たる地位 を獲得し、少し大げさかもしれませんが、痛みの治療に革命を起こしたと言えましょう。

レーザー治療はなぜ効くの?

 レーザー光の鎮痛作用は強力でありながらも、副作用がないことで知られています。今回はどのようにして効果を現すのか簡単に説明します。組織を切るレーザーのメスの出力の1万分の1以下の低出力レーザー光を痛み部位に照射した場合、その部位の血流障害を取り除き、白血球から分泌される痛み物質や炎症を増大させる物質の産生を抑制し、痛み物質が伝わるのをブロックします。皮膚の創傷(きず)部位に照射した場合は、創傷が早く治るように蛋白合成を促進したり、酵素活性を高め、新しい血管を作り出すことで、傷を治し、その痛みもとります。さらに痛みを伝える神経や自律神経にも直接作用し、照射直後に痛みをとる効果も確認されています。しかも、痛みの部位が身体の深い部分にあってもレーザー光の特性で、皮下の組織を突き抜けて届くため、治りにくい痛みに効くのです。

低出力レーザー治療紹介

 これまで何度となくレーザー治療について紹介してきました。こんな治療法があることを知らなかったとか、以前に受けたレーザー治療と全く違う、とおっしゃる患者さんが後をたたないので再度紹介します。まず第一に、この治療法は主に痛みを取り除くために用いられるのであり、その効果は特殊な病気を除けば速効性であること。つまり、どれくらいの期間、効果が持続するかは病状、重症度などにより異なるとはいえ、原則的にはその場で痛みがかなりの程度、軽減されるのが特徴。老化現象と言われ諦めていた膝、股関節の痛みや腰痛などは、数回の治療で十分でしょう。この治療法のもう一つの特徴は応用範囲が広いという点、いわゆる脳卒中後の麻痺症状、アトピー性皮膚炎、花粉症などのアレルギー疾患や脱毛症、にきびなどの皮膚疾患も。それに痛みも熱くもない治療法です。

各種肩こりのレーザー治療

 肩こりも十人十色。様々なタイプがあります。とにかく日本女性の80%、男性の60%が肩こりに悩まされているというデータもあります。日本人の生活習慣に加え、IT革命とやらがさらに拍車をかけているのでは。一般に肩こりを訴える人にどこがこっているかを尋ねれば、まず間違いなく指す部位が1点あり、その他に各人により選ばれる部位が4点ほど。そこにレーザー照射をすれば終了です。ただ我々が治療する機会があるのはこういう単純な肩こりでも重症タイプばかりなので数回は治療を必要とします。また、首の後側のこりや頭部全体の頭痛や頭重感、眼痛、まぶしさ、眼精疲労など、専門的には大後頭神経−三叉神経症候群と呼ばれるつらい症状で悩んでいる患者さんに朗報。レーザー治療がありますよ。照射部位がレーザー光の不得手な毛髪の生え際なので一工夫必要ですが。

慢性頭痛のレーザー治療

 毎日頭が重く時々ズキズキ痛み頭痛薬から離れられず、肩こりやめまいにも悩まされ続けている人は大変多いと思います。慢性頭痛の50%はこのタイプの頭痛です。これは現代人に多いストレスが原因と思われる緊張型頭痛と呼ばれるタイプと、頭の前や片側がズキズキ痛む片頭痛とか組み合わさった状態です。頭重感は緊張型頭痛のタイプで、入浴、マッサージ、飲酒等で楽になりますが、片頭痛も合わさっている人は、お酒を少し飲み過ぎただけでズキズキと我慢できない頭痛が誘発されます。4人に1人は頭痛持ちだと言われています。頭痛薬による胃炎や胃潰瘍で苦しんでいる人も多いと思いますが、こんな患者さんにはレーザー治療を。これまで幾度となくレーザー治療の紹介をしましたが、こんなに頭痛が取れるのに紹介していないという患者さんの指摘。あらためて頭痛にはレーザー治療を。

後頭部の持続的慢性頭痛のレーザー治療

 首、肩、後頭部あるいは頭全体が締めつけられるような頭痛を経験した方は大変多いのではないかと思います。その多くは緊張型頭痛と呼ばれるもので、頭頚部の筋肉の一種、コリによるものです。
 同じ姿勢を長時間保たなければいけない労働、眼を酷使するような仕事など、精神的緊張を強いられる現代人の日常そのものが問題なのです。
 ズキンズキンと血管の拍動を感じる片頭痛とは治療法も異なります。ただ、緊張型頭痛も重症になると片頭痛を合併してきます。レーザ−治療の対象となるのは、緊張型頭痛と、この混合型頭痛です。
 レーザ−光の筋弛緩作用は今では、脳出血後遺症の痙性麻痺や脳性麻痺などの治療にも応用されていますが、そのモデルとなったのは緊張型頭痛のレーザ−治療なのです。

低反応レベルレーザー治療

 レーザーの医療応用の中で人体に損傷を与えることなく生体反応を刺激、活性化させることを目的とする治療法を、低反応レベルレーザー治療と呼んでいます。鎮痛効果がその代表的なものですが、脳出血後遺症や各種神経麻痺、アトピー性皮膚炎への応用など、適応が拡大してきました。この治療法は従来、低出力レーザー治療とよばれていたものです。出力100mW以下が基本で、例え10mW以下でも刺激量として十分なエネルギー量を与えれば、すなわち、照射時間さえ十分でありさえすれば、同様の効果が得られることが分かっています。低出力レーザー光の範囲では出力が高いほど、短時間照射で済むわけです。しかし「高出力」低反応レベルレーザー 治療にはこの法則は成立しません。この新治療法も含め知ってほしい点は、鎮痛作用一つとってみても装置の使用法で有効率が3倍も違う事です。


レーザー光線が速効する痛み

 レーザー光線はどんな痛みに効くのでしょうか。
 筋肉、皮膚、関節、歯などんから起こる痛み…私たちはそれを体性痛と呼んで、胃痛のような内臓からくる痛みと区別していますが、このような体性痛にレーザーはとてもよく効きます。
 とくに、誰でも腰痛や肩こりなどで一度は経験したことがあるのではないかと思いますが、指で押すと「痛いけれど気持ちがいい痛み」。このような痛みには速効性があります。
 その他、日常よくみられるのに治療手段がなかった、腱鞘炎、テニス肘、寝ちがいからくる肩・首の痛み、日常の無理からく起こりがちな腰、背中の中心部分の痛みなど、生命にかかわらないため、治療に通 うのを一日延ばしにしなから毎日苦痛に耐えている、といった方にレーザー治療は思いがけない効力を発揮するのです。

低出力レーザー光の思いがけない効果

 微弱なレーザー光線に鎮痛作用があることが発見されたのが1970年代初頭。その後薬15年間、低出力レーザー治療は各種疼痛性疾患に応用され、癌性疼痛への有効性までも証明されてきました。しかし、最近の15年間は、非疼痛性疾患へ応用が広がってきました。特にレーザー光を頚部にある星状神経節へ照射する試みが始まり、その自律神経調節作用が注目されるに至り、精神科領域、婦人科領域(特に更年期障害)、アレルギー疾患への有効性など、次々に学会発表されるに至っています。これは治療装置の進歩によるところも大だすが、特にアトピー性皮膚炎、円形脱毛症への応用はこれまで以上に広範囲の病巣に照射可能になってきており、今後の成果 に期待。80%以上の有効率を誇る鎮痛作用を越える効果はまだ見つかっていませんが、まだまだ適応疾患が見つかる気配有りです。

五十肩のレーザー治療

 五十肩は肩関節周囲炎とも言われます。老化現象の一つとも考えられますが、肩関節の痛みと、それに伴う運動制限を特徴とし、四十代あたりから発症します。一般には、1〜2年のうちに軽くなりますが、その間、痛みで眠れないと訴える人も多く、「これという治療法もないのでじっとがまんしている」というのが現実でした。
 急性期にはまず安静。そして痛みがややとれてきたら、腕に力を入れて積極的に動かすのが原則です。とはいえ、痛みをこらえて動かすのは大変なことで、そのためステロイド剤や局所麻酔剤を関節に注射する方法も行われています。しかし、それだけでは十分とは言えず、そこでレーザー療法が用いられ始めました。軽症ならば数回、重症でも2〜3ヵ月間、週1〜2回治療すれば痛みがとれ、眠れるようになります。