甲状腺疾患とリウマチ
甲状腺の病気は、関節リウマチなどの膠原病や多くの自己免疫疾患を併発する傾向があります。甲状腺機能亢進症は特に注意が必要で、一般 には五十肩と呼ばれる肩関節周囲炎や筋肉痛、手足の指の腫れを認める場合には、関節リウマチを併発しているか精査が必要です。 甲状腺機能低下症も筋肉痛や関節痛をよく起こす病気です。指先に痛みとピリピリ感が起きる手根管症候群を併発することもありますが、これらのリウマチ症状は、甲状腺機能が正常化することにより、多くの場合は快復します。だだし、甲状腺ホルモン補充療法で、リウマチ類似の症状を発現することがあり、注意が必要です。 甲状腺機能異常を過去に指摘され現在は治療をしていないという方が、関節痛や筋肉痛を訴えて来院することがよくあります。リウマチとの鑑別 が必要です。 2007.3
リウマチの関節破壊とはれ
リウマチの関節症状で、最も重要視されるのは、関節の痛みよりも「はれ」があるかどうかです。はれている関節は、すでに破壊されているか、近い将来破壊される可能性の高い関節です。
リウマチ治療の目標は、従来は痛みを改善することでした。しかし、免疫抑制剤メソトレキセート、生物製剤の登場により、関節破壊の抑制あるいは修復が目標になってきました。
延べ1万以上の関節について検討した最新の試験結果によれば、メソトレキセートとエタネルセプト(生物製剤)の併用療法により、破壊が修復されていた関節では、はれも改善しています。一方、はれが持続していた関節では、破壊が進行していました。
関節リウマチでは、痛みとはれが常に同じ関節に見られるわけではありません。痛みは自覚できますが、痛みがないためはれを放置しているケースも多いので、はれの重大性をもう一度認識して下さい。 2007.1
早期リウマチの診断法
関節リウマチが発症した初期段階を早期リウマチと呼んでいます。一般 に関節が腫れたり、痛みが長く続くのがリウマチの特徴ですが、発症初期に慢性関節リウマチと診断されることはまれです。それは血液検査を受けても、いわゆるリウマチ反応(専門的にはIgMリウマトイド因子)が陰性のことが多いため、腱鞘炎などと診断されるからです。最近リウマチでは早期から専門的ですが、免疫グロブリンGの糖鎖のガラクトースが欠損していることがわかってきました。この発見方法が抗ガラクトース欠損IgG抗体法で、健康保険適応になり容易に測定できるようになりました。完全なリウマチであっても、従来のリウマチ反応測定法では陽性率70%ですが、新しい検査法では90%以上の陽性率と言われています。リウマチかもしれないと悩んでおられる方は一度、専門医に相談を。
リウマチの早期診断・治療
なぜ関節リウマチという確定診断を急がなければいけないのでしょうか。それは治療法が進歩し、発症早期から免疫療法を活用すれば、関節の変形や破壊を最小限にくい止められる望みが出てきたからです。手足に一ケ所でも一ヵ月にわたる痛みがあったり、たとえ一ヵ月でも関節のはれや朝起床時に手指に硬いむくんだ感じがあれば、専門科に相談した方がよいと思います。”リウマチ”反応は陰性であることが多く、必ずしも血液検査で診断がつくわけではありません。しかし、原因不明の疲労感、朝のこわばり、2関節以上の圧痛、運動痛、はれなどが認められれば、検査結果 に関わらず、非常に疑わしいと言えます。免疫療法で関節痛を鎮め、合目的な運動療法で筋力低下を防ぎ、関節機能を保つ一連の総合的治療のレールに乗って、以前の元気を取り戻しましょう。
リウマチの早期診断
関節リウマチは発病早期に適切な治療が行なわれないと、1〜2年以内に関節の変形、破壊に至る難病です。発症早期に検査を受けても、リウマチ反応が陰性であることも多く、これが早期診断の遅れの原因にもなり、やっかいです。
リウマチである確率の高い症状をお話します。1週間以上毎朝手のこわばり感が15分以上続く場合は確率67%。年齢により更年期障害との鑑別も必要ですが、原因不明の疲労感を伴えば更に確率が高まります。関節の痛みに加え、3ヶ所以上、特に手指、手首、足首、足指の腫れが1週間以上続いたらリウマチの可能性90%以上。健診で
リウマチ反応陽性を指摘された場合、その後に発症する確率が75%というでデータもあり、異常を感じたらすぐに診察を受けて下さい。リウマチの治療法はこの数年で革命的な進化を遂げています。早期診断で、関節破壊を防ぎましょう。'06.11
コンピューター時代のリウマチ
リウマチ科とはいっても、関節リウマチの患者さんだけが受診するわではありません。特に最近は肩こり、腰痛、肩、首の痛みに伴う頭痛(緊張性頭痛)、さらには手指のしびれを訴える患者さんが多くなっています。これは全国的な傾向のようで、コンピュータ時代の新しい病気と言われています。朝から晩まで一日中パソコンに向かって仕事をしている人が増加した結果と考えられています。その中でもやっかいなのが、手根管症候群と言われるもので、手首の内側の腫れや圧痛、親指、人指し指、中指のしびれや感覚異常を伴い、それが手首を手の平側に曲げると悪化すれば間違い無しです。以前は中年女性に多い病気でしたが、若い女性、男性にも増加傾向にあります。この病気も早期発見が重要で、重症化すれば整形外科的手術が必要。早期ならばレーザー治療で十分回復可能です。
手の指の関節痛
最も一般的なのが、初老期以降に指の先端に近い関節の痛みと変形を訴える手指変形性関節症です。ただし指先から2番目の関節の変形、痛みを伴う例もよくあります。典型的なケースはレントゲン検査で診断がつきますが、この病気の初期は、手指の関節の腫れと痛みがあってもレントゲン検査で破壊が認められない場合があり、慢性関節リウマチとの鑑別が大切です。リウマチの初期であったという例も多いのです。しかも、この時期はたとえリウマチであっても早期であり、いわゆるリウマチ反応も陰性のことが多く、確定診断できないこともよくあります。また乾癬性関節炎も指先に近い関節の炎症を起こします。典型的な例は爪の変化や肘、膝、腎部などに発赤や銀白色の皮膚の鱗屑(乾癬)を伴います。リウマチにとてもよく似ていますがリウマチ反応は陰性。いずれにしても確定診断が大切です。
リウマチと肺疾患
リウマチ患者さんは風邪をひきやすいか。明確なデータは少ないけれども、風邪のような気道感染症の合併症頻度は重症の患者さんほど高いと言えます。その理由は多量の免疫抑制剤や副腎皮質ステロイド剤の投与を受けているからと推測されます。しかし、良好に病状をコントロールされている患者さん達の場合は、むしろ風邪にかかりにくのではないかとさえ思われます。リウマチの場合、一番問題な肺疾患は間質性肺病変です。特に抗リウマチ剤による薬剤性間質性肺炎には注意が必要です。メソトレキセート(リウマトレックス)、金剤(シオゾ−ル)の投与を受けている患者さんは特に発熱、咳、呼吸困難の三大症状に注意して下さい。ただし、発症頻度は5%未満であり、早期に発見できればまず心配はありません。診断は胸部X線が最初で、KL6などの血液検査が一般の肺炎との鑑別に有用です。
寒冷療法
痛みのある部位に、雪や氷を押しつけて痛みを和らげた経験のある人は多いと思いますが、超低温の乾燥した冷気を患部に吹きつけることによって、さらに著しい治療効果を上げることができます。特に関節リウマチで腫脹した関節の痛みの除去、頭痛や嘔気を伴うほどの頑固な肩こり、スポーツ後の筋肉痛等従来は温めた方がよいと思われたいた病態も、寒冷療法の方がずっと効果が高い場合もあります。その他、皮膚の炎症を鎮めたりかゆみを抑える効果もあるので、アトピー性皮膚炎にもよく応用されます。また、冷気噴射によって一次的には血管が収縮しますが、二次反応として、血管が拡張し局所の血流の増大が起こるため、円形脱毛症に著効することもあります。温熱効果と比べ、応用範囲が狭いことから広く普及はしていませんが、温めてだめなら寒冷療法を試みてはいかかでしょう。
五十肩と関節リウマチ
いわゆる
五十肩は、中年以降に発症する肩関節の疼痛と運動痛制限を特徴とする疾患。広義に肩関節周囲炎と診断されることも多い。特徴的な痛みは肩関節から上腕、前腕外側、母指側への放散痛。主な圧痛点は8ケ所程度で、経過とともに疼痛部位が移動するのも特徴の一つか。初期には夜間、痛みで眠れないこともあり。腕の置き場がない程痛む患者さんも。自然治療を待っていたら後が大変。
一方、リウマチの肩痛は原則的に運動痛で、安静にしていれば軽快する痛み。もちろん他の関節にも痛みを感じたり、朝特に痛みやこわばり感が強く、痛みの程度も毎日変化するなどが特徴か。ただし、肩関節に炎症が限局したリウマチもあり、五十肩との鑑別
に注意。先の特徴をご自身の症状にはめてみて。治療法は五十肩には肩甲骨部棘下筋発痛点レーザー照射。リウマチは免疫療法、レーザーで。