高齢発症の関節リウマチの特徴
高齢者の場合、骨のレントゲン検査で老化による変形性関節症と診断されても、関節リウマチの合併を否定できるわけではありません。関節液が溜まっていれば、関節液の性状でリウマチと診断されることはよくあります。また五十肩と診断されても、両側性であればリウマチの疑いがあります。手や足の甲がバンバンにむくんで急性に発症した多関節炎が、治療しやすい特殊なリウマチ性疾患であることもまれにあります。また早期のリウマチでは必ずしも左右対称に関節炎が起こるわけではありません。
高齢発症のリウマチは肩や膝などの大関節炎が多く、また急性発症が多いのが特徴です。リウマチ反応が陰性でも否定できません。朝のこわばりも、動作開始時のみでなく手指全体に感じたら、老化によるものではないでしょう。関節リウマチの場合は、老化と違い治療法があるのです。
関節リウマチの民間療法をどう考えるか
関節リウマチは、治療が遅れると関節炎が全身に広がり、場合によっては数年で寝たきりになってしまう事があります。民間療法の中には特効薬とうたった薬や健康食品が沢山あります。そのほとんどは経験談を集めたもので診断が確かだったのか、どのような機序で治ったのか、基本的な説明がありません。リウマチ学会で発表した事と学会で認められた事とは別問題です。リウマチは単に痛むだけの病気ではありません。漢方薬も全身状態の改善に使われるもので、炎症の広がりや関節破壊の進行を止める事はありません。リウマチ治療の進歩は目ざましく、破壊された骨を再生する段階に進んでいます。民間療法や漢方薬も希望する方は、専門的治療と併用可能なものに限定すべきです。一回の治療で劇的な効果のある生物製剤の登場もあり、治療開始の遅れがないようにしたいものです。
リウマチが完全治癒できるたった一つのチャンス
関節リウマチ治療に関する日本バイオロジカルサミット2005が開催。欧米のリウマチ治療の革命進歩に遅れること6年、ようやくその風が我が国に届いた感あり。特に「window of opportunity」、リウマチが完治できる一時期が発症後3年以内にある、というデータが脚光を浴びた。これはガン治療に学んだ成果である。ガンは転移する前の早期発見・治療が 大切という認識は、国民も共有する事実。リウマチについても、多関節へ拡がり、関節破壊が始まる前、すなわち転移する前に病勢を抑え込んで完治させようというもの。状来の目標は完治ではなく寛解。生涯治療を続けなければならない。強力な治療法の出現により、完治という目標が可能になった。サミットに参加した全国200人の専門医に対し、「それぞれの地域でこの進歩の啓蒙活動をして下さい」との言葉で閉会した。
更年期の関節症状
革命的な関節リウマチ治療の進歩によって、出来る限り早期に診断し、強力な免疫療法を行って、完治させようと言う機運が高まっています。しかし、典型的な関節リウマチは専門医が見れば一目で確定診断できますが、早期リウマチと呼んでいる段階は他のリウマチ性疾患、膠原病などの初期症状と類似しています。しかも日本リウマチ学会が定めた早期リウマチ診断基準に合致する患者さんの二割程度に、実は関節リウマチではなく、更年期の関節症状と思われる患者さんも含まれています。手指の関節の痛みや腫れが酷似しているからです。更年期の関節症状の特徴は、あくまで一過性で、1年以上続いたり、多関節へ痛みや腫れが広がって行くことはありません。女性ホルモンの測定やホルモン補充療法を短期間行うなどして確定診断します。自己診断は禁物です。
関節リウマチ治療2006
平成17年度は生物製剤一色の年でした。新しい生物製剤が開発されたおかげで、関節痛の急速な改善がみられたり、「元気になった」と実感をされた患者さんも多かったと思います。
しかし、期待ほどの恩恵を受けられなかった方もおられるのも事実。リウマチが難病であることを、改めて実感されたことでしょう。一つの治療法で解決されることは大変難しいのです。
近年、新薬がぞくぞくと登場しています。世界中の研究者、薬剤関連メーカー、新規参入組がこぞってリウマチの克服に立ち向かう機運。かつての癌医療の進歩を見る思いです。リウマチが不治の病でなくなる日も近いと感じています。
ただ、社会保険制度崩壊による医療費負担の増大は確実で、リウマチ克服の大きな課題です。高価な新薬をどう使うかが難題です。
関節の腫れを見逃さないで
日本リウマチ学会2007で、関節炎症状出現早期で診断未確定の段階の患者さんを登録し、定期的に経過観察する部門を開設したという長崎大学の報告がありました。
関節リウマチは、早期発見治療で約40%の患者さんが寛解(治癒に限りなく近い状態)するようになり、早期発見の重要性が高まっています。強力な免疫抑制剤と生物製剤の登場によって治療法に革命的な進歩があったからです。早期に発見された場合に限られると言う条件付きですが、不治の病というイメージは昔の話です。寛解する機会を逃さないためには、リウマチの疑いの段階から炎症活動性を定期的にチエックする必要があります。
健康保険制度の変化で治療費が非常に高額になったことは大問題ですが、癌医療と同様に早期発見治療でその後の医療費なしの時代が来ると考えればどうでしょうか。2007.6
関節リウマチ、変形性関節症、痛風の見分け方
今回は、関節の痛みを訴える、よく似た病気の見分け方のお話です。
痛風は鋭く尖った尿酸の結晶が関節にたまって炎症を起こす病気です。高尿酸血症が持続している場合にみられます。ただし、発作中の尿酸値は必ずしも高くない点に注意が必要です。関節リウマチの関節痛は一般に強くなったり弱くなったりしながら持続性します。痛風は発作性で男性が95%位を占める点も大きな特徴です。リウマチのように多関節に痛みが起こることもありません。
変形性関節症は、加齢に伴う軟骨の破壊です。指先の関節の変形が特徴的ですが、リウマチと同様、指の中央の関節の変形もよくみられるので注意です。膝の腫れの訴えもよくありますが、強い炎症反応がないのが特徴です。X線検査でも特徴的な変化を認めますが、リウマチでも老化による変化は同様です。
リウマチ治療の現状
関節リウマチの医療は、飛躍的に進歩しています。病態解明が進んだ結果ですが、すべての患者さんに恩恵を与えられるところまでは至っていません。
現在のリウマチ治療において、患者さんの将来は「(発症初期を除けば)メトトレキセートという薬剤に副作用なく反応するかどうか」にかかっていると言っても過言ではありません。
この薬剤を十分量使用したにもかかわらず無効だった場合、最新の生物製剤の使用を検討することになります。しかし、肺、肝臓、腎臓に異常がある方、糖尿病などの合併症のある方、結核の既往のある方、癌などの悪性腫瘍の治療後間もない方など、通常の治療ルートに乗せられない患者さんの場合には、治療法も千差万別です。
高額な薬剤が多いのも治療の選択肢を狭める大きな問題です。
リウマチ治療のアンカードラッグ
先日、長崎で開催されたリウマチ学会で熱い論議が交された注目の治療法は、やはり『生物製剤』でした。従来の治療法がかすんで見える程効果がある薬剤です。
リウマチ治療が転換期にあることは確かです。私の経験でも、生物製剤を開始した患者さんの7割以上は、治療直後から関節痛が改善し、「気分がとても良くなった」と話されます。
ただし、リウマチ治療で最も頼りになる薬剤(リレー競技で言えば最終走者であるアンカー)はメトトレキセート(商品名:リウマトレックス、メトレート)
です。
現在、最も強力な治療薬と言われる生物製剤の効果を最大限に引き出すためにも、基本的にこの薬剤の併用が必要となります。副作用に注意は必要ですが、患者さんの将来を左右する最も重要な薬剤であることは間違いありません。
リウマチ外来のレーザー治療
リウマチのレーザー治療に期待される効果は大きく2点あります。鎮痛作用はよく知られている効果で、レーザー治療直後に関節痛を軽減する有効率は多施設で70〜80%と報告されています。しかし、現在最も強力なリウマチ治療薬である生物製剤でも軽減できかった関節痛に対する当院の研究では25%の有効率に止まっており、すべてのリウマチ患者さんをこの治療法の対象にはできません。
次に期待される効果は、既に破壊されてしまった関節に対する関節機能の改善、機能維持効果
です。これは薬物療法に期待しにくい効果で、リハビリテーション医療に組み込まれる領域のレーザー治療です。1〜2週に1回、継続して行ないます。疲労感の改善や元気になった実感が得られることもこの治療の特徴です。ただし、リウマチ専門外来に組み込まれてこそ本領が発揮される治療法なのです。