レーザー治療について
レーザーは、地球上に存在するさまざまな光源の中でも、特に優れた性質を持った人工的な光源です。この優れた性質のレーザー光を医学的に応用したのがレーザー療法です。各種外科手術に用いられる高出力レーザー療法(高反応レベルレーザー療法)と、健康な組織に対しては、全く組織破壊作用を持たない非常に低い出力のレーザー光を用いる低出力レーザー療法(低反応レベルレーザー療法)があります。この2つの中間的存在を中反応レベルレーザー療法と呼んでいます。レーザー光の生体に対する作用は数多く認められますが、ここでは、レーザー光の鎮痛効果をはじめとする生体の恒状性(くずれた状態をもどす力)維持効果を利用した低反応レベルレーザー療法について紹介します。
レーザー治療装置開発の歴史と現状
レーザー発振に初めて成功したのが1960年です。その後、医学生物学への応用が急速に広がりました。
わが国における低出力レーザー治療装置開発は1970年代後半に始まっています。最初はヘリウムネオンレーザーという、いわゆる気体レーザーが主流でしたが、出力の点で限界があり、1980年代には半導体レーザーという固体レーザーが広まり現在に至っています。現在、連続波出力で1Wパルス波で10W程度までの低出力レーザー治療装置が普及しています。
一方、われわれは同時に多くの炎症部位を治療する目的でマルチレーザー治療装置を開発。追随する他メーカーも現れ、マルチ化や高出力化も今後の流れと考えられます。
関節リウマチを代表とする各種の疼痛をとめる効果は75%以上の有効率です。
この急性鎮痛効果がレーザー治療の大きな特色です。 我々は、動物実験を始め、コンピューター歩行分析装置やラジオアイソトープを使った滑膜シンチグラフィを用いた研究など、いろいろな角度からレーザー光の持つすぐれた鎮痛効果を証明してきました。そのいくつかを今後紹介してまいります。
その他骨軟骨破壊病変の修復作用など多彩な効果が認められていますので、順次データを公開していく予定です。
レーザー治療の多彩な作用
レーザーは人工的に作られた光です。高い出力のレーザー光は、核融合に応用されたり、医学領域では、組織を焼くいわゆるレーザーメスとして応用され、一般に知られています。自然界で得られる光とは異なり、波長が統一された綺麗な光です。私達はこの綺麗な光の作用を追求しています。我々が、最初に注目したのが、レーザーメスで組織を切っても痛みが少ないという不思議な発見でした。その後、レーザー光の出力をどんどん下げても痛みを軽減する作用があるという発見があり、今日の低出力レーザー治療が生まれました。その後、痛みを軽減する作用に止まらない多彩な作用が次々と報告されるようになり、現在は低反応レベルレーザー療法(LLLT:Low reactive Laser Therapy)または低反応レベル光療法(LLLT:Low reactive Level Light Therapy)と呼ばれるようになっています。この領域を研究する日本レーザー治療学会も創立30周年になろうとしています。学会の主たるテーマであった痛みを軽減する作用については、今や局所麻酔剤との違いも明らかになっております。今では、プロスポーツの世界ではいわゆるドーピングとは異なるため、トレーニングや競技後療法として通常に用いられ、選手の皆さんの高い支持を受けております。一方、アマチュアスポーツ現場や本当に必要とされる加齢的変化に伴う一般の方々の疼痛除去に十分活用されていないという現状があります。レーザー治療装置が高額で、治療技術の習得が必要な治療法だからです。これまで以上に、難治性疼痛やご高齢の方々に対する安全な疼痛除去治療法として普及させていきたいと強く願っています。 一方、最近の話題は、疼痛寛解作用ではないレーザーの多彩な作用についてです。生物は太陽の光なしでは存在することはできません。レーザーは太陽の光とは異なり、一つの波長に特化した人工的な光であり、太陽の光の一部の作用を取り出して医療に応用するというものです。レーザー治療装置と言っても、全て同じ波長の光を出しているわけではありませんが、ここでは主に、これまで高い評価を受けてきた疼痛寛解作用を持つ波長のレーザー光が、その他に多彩な作用を持っているという視点で解説していきたいと思います。
レーザー治療の適応症
- 関節リウマチ
- 変形性関節症(関節軟骨の老化による腰痛、膝関節痛など)
- 各種疼痛(腱鞘炎、いわゆる五十肩など)
- 帯状疱疹後神経痛・三叉神経痛
- アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎
- 脳血管障害後遺症(片麻痺、知覚障害など)
- 円形脱毛症、にきびなどの皮膚疾患
- 交感神経緊張状態(星状神経節照射法)、自律神経失調症
- 頚椎捻挫(交通事故後遺症など)
- その他 ミニ情報の「レーザー医学」のページを参考にして下さい。
星状神経節レーザー照射法
頚部に存在する星状神経節にレーザー光(叉は直線偏光近赤外線)を照射し、交感神経緊張状態にある次のような疾患を治療する方法。レーザー光の特色である組織の透過性を利用した治療法です。
- アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎
- アトピー性皮膚炎(特に赤鬼様顔貌に著効例が多い)
- めまい
- 帯状疱疹後神経痛(顔面・頭部)
- 円形脱毛症
- 自律神経失調症
- その他 顔面 、頭部の疾患
レーザー治療の副作用
低出力レーザー治療は皮膚面 を介して病巣にレーザー光を照射する治療です。従って皮膚に対する副作用を考慮しなければなりません。低出力レーザーは皮膚に対する障害を与えない出力以下にエネルギーを押さえているものです。動物実験等で皮膚面に対して障害されないことは証明されています。但し、低出力レーザーは、網膜に直接照射した場合、網膜に損傷を与える可能性は十分にあるので、注意しなければなりません。その為、眼に直接照射できないよう治療装置には、安全機構が備わっていますので、一般的には問題ありません。装置によっては、安全装置が不十分なものもあり、注意が必要です。なお、生殖器(睾丸、卵巣など)に対する照射については安全性が充分に確認されていません。 関節リウマチとレーザー治療の副作用は次のページに記載しています。