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関節リウマチの治療方法

治療方法 ー薬物療法ー

薬物療法の基本的な考え方

■対症療法
  • 非ステロイド抗炎症剤(NSAID)
  • ステロイド
■根本療法
  • 抗リウマチ剤(DMARD)
  • 免疫抑制剤
  • 生物製剤
  • 研究的治療

1.薬物治療とその種類

 非ステロイド抗炎症剤(NSAIDs)ステロイド抗リウマチ剤免疫抑制剤生物製剤

1.非ステロイド抗炎症剤(NSAIDs)

 関節リウマチにおけるNSAIDs(non-steroidal anti-inflammatory durgs)の位置は、近年抗リウマチ薬の進歩により、中心的治療薬ではなくなってきています。しかし、痛みを軽減する補助的な意義は残っています。
 関節の炎症による疼痛、腫れ、熱感を軽減する薬剤。 いわゆる(解熱)鎮痛剤です。あくまで対症療法ですが、炎症活動性が低い例では、痛みがやわらぎ、日常生活が楽になるという意義はあります。この薬剤は、シクロオキシナーぜ(COX)を阻害することにより、炎症や痛みの誘発物質であるプロスタグランジン(PG)産生を抑制する抗炎症剤です。しかし、PGは胃粘膜保護などの生体防御にも働いている大切な物質でもあるのです。従って、生体防御に働いているPGの産生をも抑制すれば胃潰瘍の発症等の副作用がおこります。
 1991年、COXに2種類あることが明らかになりました。COX-1は常に多くの細胞に発現し、生体防御に働くPGの産生を促しており、COX-2は炎症部位でPGの産生を触媒しています。そこで、COX-2のみを選択的に阻害するNSAIDsの開発が始まったのです。鎮痛作用が強力でなおかつCOX-2選択的阻害作用をもつNSAIDsが理想的と言えます。なお、リウマチの炎症の場である滑膜細胞に発現するのはCOX-2 であることも確認されました。ただし、最近は、COX-2選択的阻害薬でも胃腸障害を完全に抑制することはできないということもわかってきました。
 胃腸障害で悩んでいる患者さんは自分に処方された鎮痛剤が原因かもしれません。主治医に確認を。

2.ステロイド

 副腎皮質ステロイドが正式名称です。 強力な抗炎症作用を持ち、リウマチ診療にとって欠くことのできない存在です。しかし、特効薬ともてはやされた時代から、その副作用が強調されたため、この薬剤程忌み嫌われる時代を経験した薬剤も少ないのではないでしょうか。この薬剤の功罪は使い方次第なのです。リウマチ治療におけるポイントは、ステロイドのみで炎症をコントロールしようとしてはいけないということです。プレドニゾロンで換算して1日5mg以下にし、必ず抗リウマチ剤を併用し、ステロイドの減量中止を目指すことです。ただ、できる限り減量して2mg以下にできればと考えます。しかし、一方では、ステロイドを少量でも使用している人の寿命は短いというデータもあり、中止することを目標に積極的にT2Tの実践を目指すべきです。
 なお、ステロイドの関節内注入は急性炎症を抑制する方法として、これ以上の方法はないと言える程有効です。頻繁に行うと結晶性関節炎、感染性関節炎、骨折、骨破壊等の問題があります。2週間に1回ならば問題はないという意見もありますが、私は6週間以上間隔をあけるよう心がけています。
 ステロイドの副作用は数え上げればきりがない程です。しかし、重大なものは、全身の骨粗鬆症、感染しやすく治りにくい、血圧上昇、緑内障、白内障、大腿骨頭壊死、消化性潰瘍、ステロイド筋症、糖尿病の悪化などですが、プレドニゾロン 5mg /日以下でもこれらの副作用が問題になることはよくあります。有名なムーンフェイス(満月様顔貌)は5mg /日以下でもおこりますが、私はムーンフェイスが気になり出したら、ステロイド減量のいいチャンスと考えています。この薬に患者さんの気持ちが依存していると減量が困難だからです。いすれにしても、漫然と投与せず、3週間以内に投与を中止できれば副腎機能不全は起こらないと考えられておりますので、やむなくステロイド使用を開始する場合でも3ヶ月以内に

関節リウマチにおけるステロイド
利 点 ① すみやかな抗炎症作用、だだし、6ヶ月間治療で効果減弱
② 骨破壊抑制作用、ただし。短期的
③ 健康感増大
④ その他
欠 点 ① 骨粗鬆症
② 耐糖能低下
③ 血圧上昇
④ 動脈効果
⑤ 皮膚の菲薄化
⑥ 白内障
⑦ 満月様顔貌
⑧ その他

3.抗リウマチ薬(免疫抑制剤を含む)

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関節リウマチにおける慢性的な滑膜炎を抑制し、軟骨・骨破壊の進行を遅らせることで、長期予後を改善させることが期待できる薬剤。関節リウマチ治療の中心的役割を担う薬剤です。この疾患の流れを変え得る薬剤で、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)と呼んでいます。効果の発現が遅いことから遅発性抗リウマチ薬とも言われます。DMARDsなくして今のリウマチ治療は語れない程大きな存在です。ただし、それ程種類は多くない上、個々の薬剤で効力に大きな差があり、副作用にもある程度差を認めます。一般的には効力の高い薬剤程、副作用も強いと言えます。専門医の力量が問われる分野です。  
 現在、わが国で認可されている薬剤(商品名)は14種類です 。
(数字): まだ認可されていない

1.カルフェニール 6.シオゾール 11.プログラフ (16).サンディミュン
2.モーバー・オークル 7.ブレディニン 12.ケアラム・コルベット (17).ミノマイシン
3.リドーラ 8.アザルフィジンEN 13.イムラン (18).チオラ
4.メタルカプターゼ 9.リウマトレックス•メトレート•メトトレキサート 14.エンドキサン (19).その他
5.リマチル 10.アラバ (15).シクロスポリンMEPC 2015.10現在

 これらの薬剤には効果の現れる人(responder)と無効の人(non-responder)が明らかに存在します。その違いは投与前はわかりません。その点はまだ専門医の経験からくる勘に頼らざるを得ないのです。しかし、薬剤をはじめ、あらゆる化学物質の分解に関与するスーパー酵素、チトクロームP450遺伝子の解析によってresponderとnon-responderの差を見つけようとする研究など、近い将来には勘の医療から抜け出ることが期待されます。 現在最も期待されるのがJac3阻害剤で、再びリウマチ医療に大きな変化が起こるでしょう。

  商品名 効果発現 効果 安全性 特徴
1 カルフェニール 3ヶ月 高(腎障害) 単独での効果低い
2 オークル、モーバー 3ヶ月 高(胃腸障害以外少ない) 活動性低い例対象
3 リドーラ 3ヶ月 高(下痢が多い) シオゾール有効例に使用可
4 ブレディニン 3ヶ月 高(高尿酸血症他少ない) 腎障害例にも使用可
5 アザルフィジンEN 1~2ヶ月 高(薬疹以外少ない) 効果発現速いが早期にエスケープ、用量依存性
6 メタルカプターゼ 2~3ヶ月 中(蛋白尿、薬疹) 有効例は効果持続
7 リマチル 2~3ヶ月 中(蛋白尿、薬疹) 有効例は効果持続
8 シオゾール 3ヶ月 中(薬疹多い、間質性肺炎) 有効例は効果持続
9 リウマトレックス
メトレート
1~2ヶ月 低(間質性肺炎多い) 用量依存性に効果上昇、抗リウマチ薬の中心
10 アラバ 4~5日 低(間質性肺炎他副作用多い) 副作用と効果のバランスが問題
11 プログラフ 3~4ヶ月 中(耐糖能異常、腎機能異常) 耐糖能性機序に作用、併用療法
12 ケアラム・コルベット 1~3ヶ月 中(肝機能異常) 早期鎮痛効果あり
13 イムラン 1~2ヶ月 中(骨髄抑制) 適応注意
14 エンドキサン 1~2ヶ月 中(骨髄抑制、出血性膀胱炎) 適応注意
注) エスケープ:投与中に効力が減弱すること  
用量依存性:投与量と効果の相関性が高いこと

以上の中で、日本リウマチ学会が投与を推奨(推奨度A)しているのが5,.7,9,10,11です。抗リウマチ剤の中で最も有効率・安全性の両面で推奨されているものです。しかし、中心は9,のメトトレキサートです。13,14は、他剤効果不十分で、MTX投与不可症例に有用です。

抗リウマチ薬の本邦における問題点
  • 抗リウマチ薬の中心的存在であるメトトレキサート(商品名:リウマトレックス、メトレート)を使用するタイミングが遅れる傾向がある。炎症活動性の高い例には最初から使用すべきであるが、熟練したリウマチ専門医以外使用がためらわれることが多く、副腎皮質ステロイドのみで無為に時間を浪費してしまうケースが多い。初診医と専門医の連携が今後の課題。
  • メトトレキサートは、骨関節破壊を抑制する効果が最も高いDMARDsであるが、効果は用量依存性で、十分な投与量が必要であるが、本邦では、16mg/週(リウマトレックス、メトレート8個/週)が社会保険上の上限使用量に2011年2月に改正されました。発病早期から十分量のメトトレキサートを服用することが大切で、関節破壊が進むかどうかの将来はそこで決まると言っても過言でありません。

    リウマチ治療薬MTXの許容量
     リウマチ治療の中心はMTXと呼ばれる免疫抑制剤です。リウマチ医療に革命を起こした生物学的製剤もこの薬剤との併用で有効性が高まります。しかし、MTXの投与量が常に問題になっています。欧米人は25mg/週投与が必要であると主張、日本人はこの量では肝機能障害をきたすことが多く、12mg/週以下で投与されているのが現状です。最近、詳細は省きますが、細胞に作用する時の変化体であるMTXーPGを測定(慶應義塾大学 竹内教授ら)することにより、日本人は欧米人の半分量でも有効であるというデータが示されました。しかし、同時に8mg/週は必要だという結果も出ています。我々がMTXの投与量の限界を肝機能検査で見てきたことも正しかったようです。強力な薬剤を安全に使用するための指標があることはとても重要なことです。むしろ残念に思うことは、MTXや生物学的製剤の副作用のみを恐れて治療チャンスを逃してしまった患者さんを診た時です。

    MTXの長期投与の問題点
     患者さんの高齢化にともなう副作用が問題になっている。加齢により腎機能低下のため、骨髄抑制、日和見感染(結核の再燃、ニューモシスティス肺炎など)のリスクが上昇する。長期連用の是非も議論されています。
  • スルファサラゾピリジン(商品名:アザルフィジンEN)はアメリカリウマチ学会で認められた数少ない抗リウマチ剤の1つでする。その効果発現は速やかで、発病早期からの投与が推奨されている薬剤です。投与開始1ヶ月程度で関節痛、腫脹等の改善がみられ、しかも副作用は非常に少なく、安全性の高い薬剤です。その効果の特徴は効果発現がすみやかですが、2年程度で効果の減弱がみられること。しかし、投与量を増量すれば、さらに効果を持続させることができるという特徴も合わせもっているユニークな抗リウマチ剤です。問題点は社会保険上2錠(1000mg)/日が投与量 の限界と定められている点です。専門医との信頼関係で問題を解決するしかないのですが。
  • 抗マラリア剤(ACG)は欧米では抗リウマチ薬の基礎薬であり、有用な薬剤として、しかも安全な薬剤として使用を推奨されているが、本邦では使用不可。検討もされていないのです。

5.免疫抑制剤

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関節リウマチ適応の免疫抑制剤

1.メトトレキサート(MTX)、2.レフルノミド(LEF)、3.ミゾリビン(MZB)、
4.タクロリムス(Tc)、5.アザチオプリン、6.シクロフォスファミド、7.トファシチニブ

RAにおける免疫抑制薬の作用機序による分類

  • 代謝拮抗薬 核酸合成阻害によるリンパ球の増殖、分化を抑制するタイプ。
    ∗葉酸代謝拮抗薬:メトトレキサート(ピリミジン、プリン両者の代謝拮抗薬)
    ∗ピリミジン代謝拮抗薬:レフルノミド
    ∗プリン代謝拮抗薬:ミゾリビン、アザチオプリン
  • カルシニューリン阻害薬 リンパ球機能抑制タイプで、主にT細胞機能を抑制する。炎症性サイトカイン産生などの抑制により、抗リウマチ作用を発揮する。
    ∗タクロリムス
    ∗シクロスポリン

Methotrexate(MTX)はアンカードラッグ

 リウマチ治療の中心的薬剤で、リレー競技等のアンカーに例えられる程の重要な治療薬です。関節リウマチの治療の革命の影の立役者です。この薬剤がなければ、現在の治療革命は起こらなかったでしょう。リウマチ専門医とはこの薬剤を使いこなせる能力を持つ医師を指すと言っても過言ではないでしょう。

Methotrexate(MTX)の主な副作用

  • 肝酵素上昇
  • 口内炎
  • 血球減少
  • 嘔気
  • 急性間質性肺障害
  • 感染性(日和見感染に特に注意)
  • 急性骨髄障害

6.生物学的製剤

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関節リウマチの革命的治療

抗リウマチ薬はメソトレキセート、レフルノミドの出現、サイトカインを標的とした生物製剤、インフリキシマブ、エタネルセプト等の登場により、炎症抑制に加え、骨破壊抑制作用をもつ治療薬が注目されてきています。

日本で臨床応用されている生物製剤

1.Infliximab(レミケード)、2.Etanercept(エンブレル)、3.Tocilizumab(アクテムラ)、
4.Adalimumab(ヒュミラ)、5.Abatacept(オレンシア)、6.Golimumab(シンポニー)、
7.Certolizumab pegol(シムジア)


生物学的製剤

関節リウマチに使用される生物学的製剤の概要(承認、承認予定含む)

製剤名 商品名 製剤の構造 投与方法 開発状況
インフリキシマブ レミケード キメラ型抗TNF-αモノクローナル抗体 0,2.6週目と以後2ヶ月ごとの点滴 欧米で開発使用、 日本で承認(2003.7)
エタネルセプト エンブレル 可溶性TNF 受容体とヒトIgG のFc部分の融合蛋白 1回10〜25mgを週2回または1回50mgを週1回皮下注(自己注射可) 欧米で開発使用、 日本で承認(2005.3)
アダリムマブ ヒュミラ ヒト型抗TNF-αモノクローナル抗体 2週に1回皮下注(自己注射可) 欧米で開発使用、 日本で承認(2009)
トシリズマブ アクテムラ ヒト化抗IL-6受容体モノクローナル抗体 1ヶ月に1回点滴静注 日本で開発、欧米で使用 日本で承認(2009)
アバタセプト オレンシア ヒトCTLA4とヒトIgGの融合蛋白 0,2,4/週目、その後1ヶ月に1回点滴静注 欧米で開発使用、日本で承認(2010)
ゴリムマブ シンポニー 完全ヒト型抗TNF-αモノクローナル抗体 1ヶ月に1回皮下注 欧米で開発、日本承認(2011)
リツキシマブ リツキサン キメラ型抗CD20モノクローナル抗体 1ヶ月に2回点滴静注 欧米で開発、日本未承認

生物学的製剤治療の特徴と使い分け(私見)

  • バイオ(生物学的製剤)難民にしないために
    • 最初に用いる生物学的製剤の選択を誤ると、次々と無効になり、炎症を抑える有効な生物学的製剤がなくなってしまう危険あり。 各種生物学的製剤の特徴を知って薬剤選択することが重要です。何よりも数ある生物学的製剤の効果が全て同じというメーカーサイドからのデータが存在することが問題です。そのため、7剤の生物学的製剤の中から「患者さん自身」に選択させたり、どんな患者さんにも「全て同じ製剤しか投与しない」という医療施設などは論外です。患者さん個々の特徴やリスク因子などを把握した上で、将来に渡り患者さんの不利益にならないように薬剤を選択しなければなりません。年齢もまた選択基準の大きな要素です。特に、最初の薬剤選択が何よりも大切で、患者さんの将来を決めてしまうといっても過言ではないと思います。バイオ難民を作らないために、最初の薬剤選択は、慎重に。
  • レミケード、ヒュミラ、シンポニー、シムジア(抗TNF中和抗体製剤)の特徴
    • 製剤名で、レミケード、ヒュミラ、シンポニー、シムジアの4剤とバイオシミラーと呼ばれる類似の安価な後発製剤が次々と登場しています。これらの製剤は、関節リウマチの炎症を惹起する最大の要因であるTNFと呼ばれる炎症性サイトカインをブロックする作用を持っています。リウマチ治療に革命を起こしたと言われる製剤グループです。その中でも、レミケードのみが点滴投与で、ヒュミラとシムジアは患者さんの自己注射が認められています。シンポニーは月1回、医療機関で皮下注射を行うように支持されています。薬剤費が高額という欠点はありますが、発症早期には、半年から1年間投与し、十分な寛解(炎症活動性低下または消失)状態に入れば、薬剤投与を中止できる可能性がある製剤グループです。その中でもレミケードどヒュミラの情報が豊富です。シンポニーは、製剤的には、皮下注射時の痛みが少ない点が人気です。有効性や安全性はレミケード、ヒュミラと同等と考えます。ただし、当院の経験では、レミケード、ヒュミラで投与を中止できた患者さんが多いです。シムジアは最も新しい製剤で、効果発現が早いという特徴がありますが、効果の持続性などに情報不足の感あり。バイオ難民にしないためには、このグループの製剤を発症早期に最初に投与するのが理想的と考えます。
  • エタネルセプト(製剤名エンブレル,他)投与について
    • この製剤はレミケードに次いで、日本で2番目に保険収載された生物学的製剤です。TNFを標的にした受容体製剤で、有効性と安全性において最もバランスのとれた生物学的製剤であると思います。日本で最も多くのリウマチ患者さんに使用されています。この製剤の特徴は、投与量を減らしながらも長く有効性を維持できている患者さんが多く、薬剤費負担という点でも大きな利点を持っています。しかしそれと裏腹に、良くなっても中止すると再燃することが多く、患者さんは投与し続けることになります。保険収載後10年経過し、そろそろ効果が薄れてきた患者さんを目にするようになりました。次の製剤の選択に困っています。7剤あるうちの6剤の有効率が低いのです。有効率が高いのが、アクテムラただ一つです。この製剤については、エンブレルと同様に安全に使用できるかの再検討が必要です。アクテムラは安全性という点で高齢者には投与しにくく、体重の重い患者さんには有効投与量が増えるため、薬剤費負担が問題になります。生物学的製剤を選択する際には、現在の疾患活動性だけではなく、10年後も見据えて製剤選択しなければなりません。特にエンブレルを選択する際は、この点に注意してほしいと思います。多くは専門医側の問題ですが、現在エンブレルを投与されている患者さんも10年後を思い、今どうするかという視点が必要です。若くして発症してしまった場合、エンブレルではなく、抗TNF中和抗体製剤(レミケード、ヒュミラ、シンポニー他)を選択することをお勧めします。薬剤費負担が重いのが難点ですが。
  • オレンシアの特徴
    • 生物学的製剤の中でも、特色のある製剤です。最近の研究で、開発当初の予想をはるかに超えた新たな作用点や、効果発現が明らかになっており、期待が広がっております。本来、T細胞を主な標的とする製剤として開発されていますが、メトトレキサートを併用せずに有効性を発揮するため、高齢患者さんや、活動性の低い間質性肺炎を合併した方、炎症が強いにもかかわらず、他の生物学的製剤を使いにくい患者さんに威力を発揮します。決して誰にでも安全であるというわけではなく、他の製剤が使えない患者さんを救える可能性があると理解してください。あくまでも慎重に。
  • アクテムラの特徴
    • この生物学的製剤は、非常に強力です。IL6が標的であり、少なくとも3割のリウマチ患者さんにとっては、この製剤よりも有効な製剤は未だ存在しないと考えています。この製剤が有効な患者さんは明確です。一言で言えば、炎症活動性が高く、CRP高値のリウマチであること。かつて抗TNF製剤治療が無効だった場合や、オレンシア無効例にとっては救いです。もちろん本剤が適応であれば、一番最初からこの製剤を選択することは可能です。本剤を投与するにあたり、守らなければいけないことは、CRP値が陰性化する十分な投与量が必要であるということです。投与開始時は、点滴製剤で十分量投与し、効果発言後、徐々に減量誌し皮下注製剤に変更していく。この原則を守らないで、本剤が無効と判断してはいけません。ただし、この製剤投与を続ける限り、感染症合併が多く、炎症指標のCRPが感染症に罹患しても陰性のままなのが問題です。感染症を発症早期に見つけにくいことを常に念頭に置きながら、患者さん自身とともに、注意深く監視し続けることが大切です。それとともに、この製剤が効いて、疾患活動性が低下し始めた時には、本剤を減量していくこともリスク管理の上で重要です。次に当院における投与経験を示します。

2.外科的療法(手術療法)

 関節リウマチは全身性炎症性疾患です。炎症のコントロールには、抗リウマチ剤をはじめとする薬物療法、全身状態の管理などの内科的治療が主体です。特に、生物製剤の登場により、手術のタイミングが問題になっています。生物製剤投与中の手術は、原則、薬剤の血中濃度半減期を参考に決めています。参考にして下さい。
 しかし、内科的療法によってもなおかつ、限られた関節について腫脹等の炎症が消腿しない場合、手術療法(滑膜切除術)が行われることがあります。
 また、関節の破壊による機能障害をきたした場合、失われた機能の再建をめざし、人工関節などの関節形成術、腱形成術などの外科的処置が行われます。
 最も大切なことは、全身の炎症活動性を内科的治療である程度抑制できてはじめて、手術療法が可能になるという点です。そうでなければ、手術後のリハビリテーション療法が、うまくいかないなど好結果が生まれません。
 私見としては、日常生活をいとなむ上で、最も大切な股関節、膝関節、両肘関節が破壊され、著しい機能障害に陥った場合手術を勧めています。だし、手術をするかしないか、できるかできないかについては主治医とよく相談して下さい。

3.基礎療法・リハビリテーション療法

  • 物理療法
    物理的なエネルギーを利用して、生体反応のゆがんだ平衡状態を調整しようとする治療法です。
    私はレーザー治療を通 して物理療法の大切さを痛切に感じてします。
  • 運動療法
  • 日常生活動作訓練
  • 装具療法

リハビリテーション療法の考え方と実際