サーカディアンリズムとレーザー
人間も含めた地球上の生物はサーカディアンリズム(概日リズム)を持っています。明るくなったら目覚め活動し、暗くなったら活動を休止し睡眠に入ります。健康的に光に反応している状態です。現代人には夜活動している方も多いと思いますが、昼夜逆転しても生物としての概日リズムは変わりません。つまり、夜は活動休止状態にある自律神経系、免疫系、内分泌系の状態のまま活動する不自然な状態です。そのため、非効率で尋常な発想、思考ができていない可能性があります。
光は眼から入ってくると思われていますが、実は、全身で光を感じています。全盲の人達にも昼夜のリズムがあるのです。概日リズムに関する各種細胞遺伝子レベルでの研究も進んでおり、人工的な光やレーザー光を使って、サーカディアンリズムの異常による体調不良を是正しようとしています。
2011.2
レーザーの多彩な作用はどこから生まれるのか
生物には光を利用し活動エネルギーを生み出すシステムが備わっています。これが光の多彩な生物学的活性化作用の源です。
レーザーは人工的な光ですが、レーザーのもつ生物学的活性化作用はとても強く、しかも多彩で様々な病気の治療に用いられています。顔面神経麻痺、脳出血後の片麻痺、不眠症、冷え性、脱毛症、感冒体質、虚弱体質、生理不順、皮膚の老化などへの変幻自在と思われるレーザー治療の効果は、レーザーによって生み出されたエネルギーが、自律神経系、内分泌系、免疫系の異常などによる身体の不調を正常な状態に戻す(恒常性)よう作用しているためです。おもしろいことに関節リウマチのように関節に熱感を伴って痛い場合はレーザー照射によって熱を下げ、冷えて痛む部位に照射すれば温かくなって痛みが取れます。相反する血管収縮作用と拡張作用のどちらが引き出されるかは相手の状態次第で決まるのです。 2010.10
第22回日本レーザー治療学会より
痛みの感じ方は年齢と性別によって違うようです。それに伴い、レーザー治療による痛みに対する有効性に差がありそうだというデータが数人の先生から報告されました。なぜなのかはまだわかりませんが、私自身も、確かに高齢の女性の膝関節痛や肩こりにレーザーが効きやすいという印象があります。閉経前後に腱鞘炎や筋肉痛が起こりやすい、出産後や更年期に関節リウマチが発症しやすいこと等、痛みと女性ホルモンに密接な関係があることはわかっています。
市民公開講座は会場が満杯の状況で、レーザーによる抗加齢療法のお話から健康や肥満に関する質疑応答まで、皆様の健康や老化に対する関心の高さを痛感しました。レーザーの有効性の高さと安易に使用することの危険性もまた認識していただいたことと思います。今年の学会は私が担当でしたが、来年も企画できればと思います。
2010.8
第22回日本レーザー治療学会市民公開講座の紹介
平成22年6月27日、横浜山下公園近くの会場で、開催します。講演1は関節リウマチ、変形性関節症、五十肩、腱鞘炎、スポーツ障害等の整形外科的な痛みについて、レーザー光を主に利用した治療法に関するお話です。講師は篠山病院整形外科部長の楊鴻生先生です。会場からご自身の痛みについて相談されたらいかがでしょうか。講演2は皮膚の美容、抗加齢療法のお話です。講師の久保田潤一郎先生は自身のクリニックを開業され、国際的にも第一線でご活躍の先生です。あざ、しみ、しわ、たるみなど、女性に限らず、多くの方々が密かに悩んでおられる問題について、眼で見て碓認できる治療前、治療後を示して頂けるものと思います。レーザー治療を中心とした最新の治療法を紹介して頂きます。参加希望の方は、お名前●ご住所●ご連絡先を記入の上、事務局FAX 044-954-0622 にお申込下さい。 2010.5
第30回日本レーザー医学会より
レーザー医学に携わる10学会の代表が一同に集まり、正常組織をできる限り破壊しない低侵襲治療におけるレーザー医学の発展の為、熱い議論がかわされました。自身も日本レーザー治療学会を代表し、人々の健康や幸福に貢献してこそテクノロジー発展の意義があることを強調してまいりました
分子生物学、バイオテクノロジーの進化の時代にあり、レーザー技術を用いた細胞機能や遺伝子発現の制御、蛋白質や高分子化合物の分析等の研究が進んでいます。2010年、微力ながら学会長として第22回日本レーザー治療学会を開催します。スポーツ科学領域における強力で安全な鎮痛抗炎症作用、自身の専門領域である抗リウマチ作用、美容、アンチエイジング効果等幅広い領域で、レーザーの標的は何なのかをテーマに議論が展開されると思います。いずれまたお話いたします。
2010.1
関節リウマチとレーザーの鎮痛作用
我々は身体のいたる所で温かさや冷たさを感じます。それは温度の違いを感じるTRPV1受容体と呼ばれる分子構造があるからです。この温度受容体は、通常は43度を超えると温度上昇につれて痛みとして我々に伝えます。
関節リウマチでは炎症物質により、我々の体温の36度でもこの受容体が痛みとして伝えるようになります。炎症物質の産生や作用を抑えるのが、消炎鎮痛剤や、抗リウマチ剤です。中でもメソトレキセートを筆頭とする免疫抑制剤や、最近よく報道される生物学的製剤が強力です。レーザー光も炎症物質の作用を抑制し、受容体に働きかけて鎮痛作用を発揮します。薬物療法と併用することも有用です。
関節リウマチでは、炎症部は熱を持っています。レーザーの作用は、組織を温める効果ではありません。熱をもって痛む関節に対してレーザーを照射すると関節の熱感がとれて痛みをとるという経過をとります。2009.10
レーザー療法の話題2009
第21回レーザー治療学会の話題です。トップアスリートの練習や競技直前の筋肉や交感神経節へのレーザー照射により、身体の柔軟性が増し、疲労回復が早くなることを、Jリーガーや、ラグビー選手、駅伝選手等で証明され、導入に期待大であることが示されました。レーザー光照射により組織への酸素供給が高まり、疲労蓄積や故障の危険が低下するわけです。レーザー治療だけでは、治療効果が低かった場合の帯状疱疹後神経痛に対する治療法も大変興味深い報告でした。
一方、レーザーによる若返り効果も示され、アンチエージングの手法としてレーザーが有効というデータも多く示され、今後の期待領域と思います。
光の特性を生かした医学・生物学への応用では、レーザーによる胆石の破壊技術、椎間板ヘルニアのレーザーによる安全な治療方法の開発等の論議がされました。新技術が、近い将来使用可能になるでしょう。2009.8
レーザー治療はオーダーメイド
レーザー治療は、動物実験を始めとする多くのデータに基づいた医療(ΕΒΜ)です。しかし、実際には、個々の患者さんによって治療法や効果が異なるため、個々の患者さんの評価に基づいた医療(ΡΒΜ)を大事にしようという動きが高まっています。
整形外科的な腰痛、五十肩、腱鞘炎、スポーツ障害によるテニス肘、足底筋膜炎等、痛みを訴える病気に対しては、速効的な鎮痛効果
をねらってレーザー治療を行います。治療効果の評価は、効くか効かないかをその場で判定してもらうΡΒΜで評価します。一方、痛み以外の慢性症状である不眠症、自律神経失調症、更年期障害、アトピー性皮膚炎等にもレーザーが成果
を上げています。繰り返し治療が原則ですが、この場合も、ΡΒΜで効果判定を行います。
つまり、レーザー治療は、個々の病態に合わせたオーダーメイド治療です。 2009.4
低反応レベルレーザー治療の特徴
日本スポーツ界の若きトップアスリ−ト達のアキレス腱周囲炎、バレーボール選手などのいわゆるジャンパー膝や踵の炎症、野球やテニス、ゴルフによる肘痛などのレーザー治療が、運動をやめられない選手達を支えています。薬物使用によるドーピング問題に悩まされる事がない治療法である点も有利です。
加齢による変形性股関節症や関節リウマチが原因の股関節痛には、病巣が深いためレーザーは無効ではないかと誤解している先生が多いのですが、レーザー光の特徴は皮膚にやけどをさせる事なく、深い病巣まで高い光エネルギーが達する点であり、実際、股関節痛にとても有効です。
重症の糖尿病や心筋梗塞、脳血栓などの予防のためにワーファリン、バファリン等を服用している人の痛みに対しても、神経ブロックや鍼治療などは危険であり、レーザー治療が選択されます。2008.8
治りにくい五十肩
肩が痛んで腕が上がらない、夜眠れない程痛むといった経験をしている方は多いと思います。自然経過的に治ってしまう人もいますが、一言で五十肩と言っても、治りやすいタイプと治りにくいタイプがあります。痛みが始まったばかりで、肩の動きが制限される前の初期段階は、鍼でもレーザー治療でも比較的容易に治ります。
しかし、長期間経過し、腕を上げようとすると肩甲骨まで引き上がるようになってしまうと重症です。ここまで悪化した場合は、筋原性関連痛という観点からレーザー、神経ブロックなどを組み合わせて行う治療法が有効と思われます。肩の前面から前腕にかけてピリピリした神経痛を伴う場合は、変形性頚椎症などの頚椎の障害を伴う複雑型で、特にこの手法が有効と思われます。五十肩の積極的な治療法は筋原性関連痛の発痛点を探し出すことが出発点です。
2008.7