関節痛が持続した場合
3関節以上の関節痛が6週間以上続いた場合、関節リウマチかどうか疑ってみて下さい。少なくとも一過性ではなさそうです。次に腫れている関節はないか、朝、手がこわばった感じはしないかどうかを確認して下さい。もしこのような症状があれば持続性関節炎の可能性大です。リウマチ専門医が近くにいれば、この段階で受診して下さい。
我々は、関節破壊に至る持続性関節炎の患者さんを出来るだけ早期に見つけ出したいのです。強力な抗リウマチ薬の出現が早期診断の意義を高めました。メソトレキセート、レフルノミド、インフリキシマブ、さらには、タクロリムス、シクロスポリン、エタネルセプトなど次々と強力な抗リウマチ剤の開発が進んでます。この数年間でリウマチ医療は革命的な変化を続けています。また専門施設間の連携も進み、早期診断が実を結ぶ時代に入ったと言えます。
リウマチ治療は早期から積極的に
初めて関節リウマチと診断された患者さんの48%に、すでに骨びらん(骨破壊のスタート所見)が認められ、さらに発症から3年後にはこの骨びらんが9倍に増加します。リウマチの骨関節破壊は初期から急速に進行するのです。まだ初期だからとか、軽症だから薬を飲みたくないといって治療を受けていない方が、治療中の患者さんの3倍位いると考えられます。関節リウマチは積極的な治療なしで治る病気ではありません。骨関節が破壊される前に強力な免疫治療を実施すれば、完全治癒も夢ではないのです。また、今やリウマチ治療のスタンダードとなったメソトレキセートという免疫抑制剤は、リウマチ患者さんの心筋梗塞発症のリスクを低下させ、長生きさせる効果が大きいとも言われています。手足の指など3関節以上で6週間、痛みや腫れ、手のこわばりなどを感じたら、すぐに受診して下さい。
リウマチ反応陰性でも多関節が痛む時
発症早期の関節リウマチの診断はしばしば困難です。それは他の膠原病を含め、似た症状で始まる疾患が多いことと、診断を確定できる検査方法がないことによります。
リウマチの診断法として最も有名なリウマチ因子検査は、将来の発症を予測する手段としての意義は大きいのですが、関節リウマチの75%は陰性なので、この検査だけでは早期発見が難しいことも事実です。そこで出来るだけ早期に診断し関節破壊を防止するため、我が国で開発されたCARFや、今後保険適用になると思われる抗CCP抗体との組み合わせ、炎症活動性指標のSAA、MMP3、血清補体価等の検査から総合的に診断しています。もちろん一過性で自然に治癒する例も存在するので、疑わしくてもすぐに治療を開始しないこともあります。しかし確定診断されたら、速やかに免疫療法を開始する必要があります。
関節リウマチの早期発見に有効なCT法
関節リウマチは多くの関節に持続的な炎症を起こし、数年以内に関節の変形、破壊に進展する難病です。しかしこの数年間の劇的な治療法の進歩により、7割の患者さんの関節破壊の進行を停止させることができるようになりました。一方、診断技術の進歩もあって、関節破壊は発症後3ヶ月以内に始まるとも言われています。そのため早期発見と適切な早期治療の重要性が叫ばれているのです。
今回は早期発見の自己診断法とも言える松原式早期リウマチCT法について紹介します。まず3つ以上の関節の疼痛が一週間以上続いた場合、手指つけ根関節の腫れあるいは手首の腫れがあればリウマチ。関節痛が3カ所以上なくても、左右対称に腫れていればリウマチ。左右対称でなくても、手首または手指つけ根関節の腫れが一週間以上続いたらリウマチ。手首と手指関節の症状がポイントです。
関節リウマチの寛解と治癒
関節リウマチは不治の病でしょうか。確かに「治癒」という言葉は使わないで「寛解」すなわち症状がおさまったと表現します。朝のこわばりが15分以内で消失し、疲労感もなく、自覚的な関節痛や圧痛、運動痛なし。関節の腫れもなく血沈値が女性で30以下、男性で20以下の基準を満たせば寛解。患者さん自身では治ったと思える状態です。現在のリウマチ治療では患者さんの7割がこの寛解に入れるようになりました。早期発見、早期治療ができれば関節変形を残さず70%以上の患者さんを寛解状態に持ち込めると期待されています。筋肉痛、腱鞘炎、変形性関節症と思い込んでいる方たちも、持続性であったり、痛む部位 が複数、朝のこわばりが強い、現在の治療に反応が悪いなど不安に思った際には相談してみることです。免疫抑制剤、生物製剤の登場でリウマチにも治癒という言葉が使えるかも。
リウマチ治療は希望を持って
リウマチ患者さんのアンケート結果によれば、楽しい会話やテレビ番組を見ている時は痛みが軽いと感じている方が約65%、逆に精神的に辛い時に痛みも強いと回答した方が50%も。希望が持てると脳からβ(ベータ)エンドルフィンというモルヒネ様物質が分泌されて、痛みを和らげ、心地良い気分にさせてくれます。その状態は一時的ではなく、一週間は続きます。絶望感や被害者意識、医療に対する不信感、薬の副作用ばかり気にするなど否定的思考の患者さんの場合、どんな治療をしても一般に結果は良くありません。最良の治療法は希望を持っていただくこと。そして患者と医師、周囲の環境も全て良好な関係が築かれることが必要です。メソトレキセートがリウマチ治療の基礎薬となって以来、治療面の進歩は革命的です。それに加えて、将来に希望を持つことが何よりの治療となるのです。
変形性ひざ関節症とリウマチ
椅子から立ち上がったり、歩きはじめに膝が痛む人は、65歳以上の日本人で20%以上と言われています。
そのほとんどは関節軟骨がすり減る老化現象によるもの。始めは痛みがあっても休めば治りますが、徐々に膝の後ろがつる、膝が張れる、O脚になり、膝に熱を持ってきて、歩行も苦痛になってきます。
これは末期の症状ですが、この状態ではステロイド剤を関節内に注入する必要がしばしば。この際、関節液の性状で実は関節リウマチであったと診断されることがあります。関節リウマチでも、膝関節の痛みだけという患者さんは確かにいます。しかし、よく聞いてみると、手も指も痛むとことがあるとか、朝は膝だけでなく手もこわばりが強いなど、本人は老化や働き過ぎと思い込んでいる場合が意外に多いのです。リウマチは老化ではなく病気。治療法も全く異なるのです。
関節リウマチのレーザー治療に注目を
関節リウマチの治療に求められるもの。第一は関節破壊の阻止あるいは修復。第ニは痛みからの解放。このニ大目標の達成に向け、メソトレキセート、レフルノミド等の免疫抑制剤、インフリキシマブ、エタネルセプト等の生物製剤の開発へと進んでいます。その効果は強力で、リウマチも近い将来、治癒する病気になると期待されています。ただし、最近マスコミで盛んに報道されているように、副作用も無視できない状態です。
一方、レーザー治療にも変化の兆し。自由電子レーザーの出現により、痛みをとることを第一目標とした従来の近赤外レーザー治療に加え、全身的な副作用はなく、特定の生体分子、例えば関節破壊に関与する蛋白質のみに吸収する中赤外レーザーを照射して、その作用を抑制することも可能となります。この分子振動領域のレーザー治療の研究が、リウマチ医療を変えるのでは。
関節リウマチの診断精度が変わる
関節あるいはその周辺に慢性的に痛みを感じる…。腱鞘炎、老化による変形性関節症などと診断されていても、リウマチではないかと心配…。リウマチ反応が陰性だからリウマチではないと診断されているのに、痛みが一向に改善しない…。このようなことが起こる原因は関節リウマチの診断の困難さにあるのです。
わが国のデータでは、血液検査上、有名なリウマチ因子が陽性であればリウマチである確率が88%と高いのですが、実際はリウマチ患者さんの39%が陰性です。そのため様々な悲劇が起こっています。そこで抗CCP抗体検査に期待が高まっています。この抗体が陰性であれば97%の確率でリウマチではないと診断でき、逆に陽性ならば87%の高い確率でリウマチと診断できるというものです。もちろんこの検査のみで確定診断されるわけではありませんが、有力な検査法です。
リウマチ治療における生物学的製剤
米国に遅れること7年。ようやく日本のリウマチ治療に生物学的製剤が導入されました。米国ではスタンダードとなった生物学的製剤のメリットとデメリットを紹介します。効果としては関節痛、関節の腫れ、こわばりなどを従来の治療法では考えられないほど速やかに改善します。患者さんの約85%に改善がみられ、全体の約40%はほぼ完全に病勢が抑制されたというデータがあります。特に点滴で用いられるレミケードは、手すりを使ってやっと階段を昇れる状態だったのが、点滴を受けた後は、スタスタと階段を昇り降りする患者さんもおられるほどです。炎症が強く働くことが出来ない。苦痛で寝ていることが多いなどの状況にはメリット大です。デメリットは結核の再燃など感染症に弱いことですが、一番は高額な薬剤費。使用出来るリウマチ専門施設も限定されているので注意が必要です。