膠原病とは
膠原病とは、免疫機構の異常により全身の皮膚や内臓に炎症を起こす病気の総称です。免疫とは本来、ウィルスや細菌などの外敵と戦い自分の体を守るものですが、膠原病では自分自身の体を攻撃するように働いてしまいます。膠原病に分類される疾患には、関節リウマチ、リウマチ性多発筋痛症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、混合性結合組織病、皮膚筋炎、多発性筋炎、血管炎症候群、成人発症スティル病、ベーチェット病、抗リン脂質抗体症候群などがあります。
膠原病の症状
膠原病の症状としては、発熱、関節痛、筋肉痛、皮疹、レイノー現象(指先が白くなる)、ドライアイ、口内炎、しびれなどがありますが、全ての膠原病に共通して認められるというわけではありません。風邪をひいたわけでもないのに毎日のように熱が出たり、原因不明の関節痛や筋肉痛が長引く場合にはリウマチ膠原病内科を受診してください。
代表的な膠原病
全身性エリテマトーデス(SLE)
膠原病の中では罹患率が比較的高く、特に20~30代の女性が多く発症する自己免疫性疾患です。症状は多彩で、発熱、倦怠感などの全身症状、特徴的な皮疹、関節痛、口内炎、脱毛、光線過敏症がしばしば見られます。両側の頬部と鼻に広がる蝶形紅斑と呼ばれる皮疹がもっとも有名な症状です。重症の場合にはループス腎炎と呼ばれる腎臓の障害や神経精神症状などを生じることもあります。採血では抗核抗体が陽性になり、よく出現する自己抗体としては抗ds-DNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体があります。治療は、皮膚症状や関節症状に対しては消炎鎮痛薬や少量ステロイド、ヒドロキシクロロキンなどが用いられます。腎炎や中枢神経病変などを合併した重症例では、必要に応じて、ステロイドパルス療法や大量ステロイド療法、免疫抑制薬(シクロフォスファミド、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、タクロリムスなど)、生物学的製剤(べリムマブ)が使用されます。初発の場合は全身の精査が必要なため、当院では基本的に大学病院にご紹介します。治療開始後病状が落ち着いている方の通院はお受けします。クリニックならではの小回りの良さを生かして、再燃を起こさないよう細心の注意をもって診療に当たります。
全身性強皮症
強皮症は、皮膚や内臓に線維化を起こすことが特徴の、30~50歳の女性に多く見られる病気です。全身に皮膚硬化が進みやすい「びまん皮膚硬化型全身性強皮症」と、比較的軽症の「限局皮膚硬化型全身性強皮症」に分けられます。「びまん皮膚硬化型全身性強皮症」では抗トポイソメラーゼI(Scl-70)抗体や抗RNAポリメラーゼ抗体が検出され、「限局皮膚硬化型全身性強皮症」では抗セントロメア抗体が陽性となります。特徴的な症状はレイノー症状、皮膚硬化、手指の屈曲拘縮で、内臓に線維化を起こすと肺線維症、強皮症腎クリーゼ、逆流性食道炎、肺高血圧症、心外膜炎、不整脈、便秘、下痢などが起こることがあります。強皮症を完治させる薬剤はありませんが、それぞれの内臓障害に対して有効な治療が開発されています。
シェーグレン症候群
慢性唾液腺炎と乾燥性角結膜炎によるドライアイ、ドライマウスを主な症状とする自己免疫疾患です。
発症は50歳代にピークがあり、男女比は1:17で、女性に多く発症します。関節リウマチの約20%に併発し、その他の膠原病にも合併することがあります。様々な自己抗体や臓器に浸潤した自己反応性リンパ球の存在により、乾燥症状だけでなく、関節痛、筋肉痛、倦怠感、皮膚症状(環状紅斑、下肢の網状皮斑、紫斑など)、慢性甲状腺炎、消化器症状など多彩な症状が現れやすい疾患です。乾燥症状に対しては対症的にドライアイ用点眼や人工唾液の噴霧、サラジェン®などの内服薬が使われますが、現在のところ乾燥症状の強い患者さんが満足できるほどの効果は得られていません。重曹によるうがい、レモン水、オリーブオイル、麦門冬湯なども使用されます。多彩な症状に対する対症療法が基本ですが、関節炎に対しては抗リウマチ薬の効果が期待できます。更年期女性に発症しやすく、症状も更年期障害に似ていることから、当院ではホルモン補充療法を試みることもあります。
リウマチ性多発筋痛症
リウマチ性多発筋痛症(PMR)は、通常50歳以上の中高年者に発症し、発症のピークは70歳~80歳です。頸部、肩、腰、大腿など体幹に近い筋肉の疼痛と朝のこわばりを主症状とする原因不明の炎症性疾患です。筋肉痛がありますが筋肉の障害はなく、血液検査上、クレアチンキナーゼ(CK)、アルドラーゼなどの筋原性酵素の上昇は見られません。末梢血で炎症性サイトカインのIL-6が上昇することが指摘されており、それがこの病気の重要な病態と考えられています。したがって、赤沈値の亢進、CRPなどの炎症反応の上昇が顕著です。抗核抗体やリウマトイド因子(RF)のような自己抗体は原則出現しません。治療は、プレドニゾロン換算10~20㎎/日のステロイドが著効します。ステロイドの減量に伴い症状の再燃を認める場合は、関節リウマチの治療に準じてメトトレキサートを使用することがあります。また、抗IL-6受容体抗体製剤であるトシリズマブの有効性の報告が相次いでおり、ステロイドやメトトレキサートの次の選択肢として有力です。